温度制御により自らの厚みの200倍もジャンプできる新素材を開発

カリフォルニア大学とカリフォルニア工科大学の研究チームが、ホットプレートで熱を加えるとバッタのように空中高く飛び上がる新素材を開発した。同素材は、温度制御で筋肉のように大きな動きとパワーを生み出せるため、生き物のようなソフトロボットの駆動部品への応用が期待できる。

同研究成果は2023年1月18日、「Science Advances」誌に掲載された。

液晶エラストマーからなる同素材は、温度を変化させたときにどのように形状が変化するかを見る実験で、研究チームによって偶然発見された。液晶エラストマーとは、ディスプレイに使われている液晶を、固形で伸縮性のあるポリマーにした材料である。従来から液晶の配向を利用して形状変化することは知られていたが、秒単位での変化であった。

しかし、研究チームが作製したコンタクトレンズほどの大きさの液晶エラストマーフィルムは、ホットプレートにセットされると、わずか6ミリ秒で厚さの約200倍もの高さまで飛び上がったのだ。

研究チームは、さらに実験と理論計算を重ねた結果、同フィルムが高く飛び上がるメカニズムを突き止めた。同フィルムは3層構造からなり、熱を加えると、上の2層が下の1層より速く収縮し、層内の液晶分子配向と組み合わさって、フィルムは数ミリ秒で円すい形になることが分かった。

さらに、円すいが形成されるとフィルムにひずみが蓄積され、瞬間的に円すいが反転して表面を叩き、材料が飛び上がるのだ。同現象は、スナップスルー遷移と呼ばれ、それまでにたまったひずみが瞬間的に開放されるので、大きなパワーを発揮する。また、同フィルムは摩耗することなく、何度でも繰り返すことができる。

同素材は、さらにさまざまな発展用途としての可能性を持つ。フィルムを温めたときだけでなく、冷やすと飛び跳ねるように材料を設計することも可能だ。また、フィルムを特定の方向にジャンプさせるために足を与えることもできるという。

同研究論文の筆頭著者Tayler Hebner氏は、「われわれの研究は、ソフトロボットのための高速で高いパワー出力が必要な駆動部品開発の新しい指針となります」と説明した。

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