納得できることに挑戦する!それを教えてくれたのは、小学校の先生と、入社当時の上司——東京電機産業 岡井律子氏

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計測・制御、情報通信機器やそのシステム開発事業を展開する東京電機産業で働く、オープンシステム部 開発グループ 課長代理の岡井律子さん。大学では情報工学を学び、入社から20年間システム開発を担当する。特許出願中のシステム開発やプロジェクト管理を手掛ける一方で、趣味のクラリネットの腕前も本格派。エンジニアとしての向上心を絶やさず、常に新しいものにチャレンジすることを楽しんでいる。(撮影:藤井 慎)

工場の制御や運用の改善を助ける

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岡井さんは、工学系を学んで技術部門に最初に入社した女性。

——現在どのような仕事を担当しているのか教えてください。

主に産業プラントで使われるシステムのうち、工場の作業者や管理者が使用するようなソフトウェアを担当しています。

現在メインで関わっている製品の一つは「eneRepo(エネレポ)」といいます。工場の消費エネルギーを帳票やグラフなどで表示して、分析できるようにするシステムで、特許出願中です。特に東日本大震災以降、省エネのために興味を持たれるお客様が増えています。

もう一つは、化学系の工場向けの「CS-Recipe(シーエス・レシピ)」です。工場では複数の原料を組み合わせて製品を作るため、製造機械に対して「なにをどれだけ」というレシピを設定します。製品ごとにレシピを変えなければなりませんが、パソコン上で設定した情報を機械に読み込ませることで、作業を安全に、スムーズにするものです。多くの種類の製品を生産する工場では、便利に使っていただいています。

——これまではどのようなシステムに関わってきましたか。

入社して初めて作ったのは、社内向けの発注DBシステム、見積システムでした。入社4年後ぐらいからは、計測器の制御をするシステムを担当しました。
その後は、「プロセスデータマイニング」というデータの解析方法や解析装置の開発に関わりました。工場で集めたデータを、将来の状態の予測に活用しようというもので、2006年に特許を取得しました。例えば今ここで温度が上がっていると、数時間後には離れた別の場所の温度が上昇するというような関係を見つけて、機械の運転の改善などに使用します。

進化する技術を学ぶのは大変。でも楽しい

——どれも難しそうなシステムですね。知識は大学で身に付けたのですか。

大学ではプログラムの作り方の基礎は学びましたが、業界の知識はもちろん、実際にシステムをどう作るのかなど、ほとんどのことは入社してから学んだと思います。
私が入社した1995年は、Windows 95が発売され、家庭にもパソコンが普及し始めた時代です。インターネットもありましたが、今ほど普及していなかったので、情報を集めるには「本」しかありません。1冊読み終わってみると、期待していた情報とは違うこともあったり……。とにかく当時は本を読みあさっていましたね。

——この仕事の楽しさや、やりがいは。

私はもともと、特に技術系の新しいことが好きなんです。早くからパソコンにも興味がありましたし、大学も仕事も技術系を選びました。この世界は進化し続けているので、ずっと同じ技術に頼っているわけにはいかず、常に新しいことを吸収していかなければなりません。それは大変ですが、楽しくもあります。そうやって学んだ技術で製品を作ることができるのは、とてもやりがいがありますね。

ヘルメット?!

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「新しいことが好き」という好奇心や探究心は岡井さんの強みでもある。

——ソフトの開発というと常にパソコンに向かっているイメージですが。

開発がメインの仕事ですが、営業と一緒にお客様のところに行くこともあります。工場の中の制御室に行くような場合には、ヘルメットもかぶります(笑)。
お客様に合わせてカスタマイズすることもありますので、お客様のお話を聞いたり、ご提案したり、そのための資料やカタログなども作ります。

私も最初は、「開発」は社内にこもって作業をするのだと思っていました。初対面のお客様と会話をしたりするのは、実は苦手だったので、初めはめちゃめちゃ大変でした。でも今では、直接お話を聞けるのことがとても楽しいですね。

——女性だから向いていると思うことはありますか。

システムを作ること自体は、特に女性のほうがいいということはないと思いますが、作ったあとには必ずテストがあります。テストは細かい部分に気づくことも必要なので、女性に向いている部分もあるかもしれません。

リフレッシュはクラリネット

——現在は課長代理という役職ですが、管理も仕事の範囲なのでしょうか。

当社では課長から管理職なので、私はまだメンバーの管理まではしていません。ただ開発はグループでする仕事なので、工程管理やプロジェクト管理の部分は任せていただいています。
当社の場合は、管理職になっても必ずしも管理業務だけというわけではなく、基本的には技術的な仕事も続けていくことができます。技術系の女性の課長もいますが、バリバリ開発もしています。

——お忙しそうですが、リフレッシュできていますか。

忙しい時期は十分な睡眠がとれないこともありますし、常に気を張って仕事をしているので、体力勝負という一面もありますね。気をつけないと気が休まる時間がなくなってしまうので、仕事の考えごとは電車の中までで、家ではなるべく考えない! できるだけ切り替えるようにしています。

子どものころピアノを習っていたこともあって音楽は好きです。いろいろなジャンルの音楽を聞いたり、コンサートに行ったりします。高校時代は吹奏楽部でクラリネットを吹いていたのですが、今もOBバンドで続けています。仲間に恵まれてありがたいですね。仕事とはまったく別のことなので、リフレッシュできます。

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仲間たちと。クラリネットは気分をリフレッシュしてくれる。

分け隔てなく扱ってもらえたおかげ

——子どものころから理系が好きだったのですか。

理系が好き……というより、文系が苦手でしたね。
幼稚園に入るまでは、近所の同年代の8割ぐらいが男子だったので、そのせいかもしれませんが、女の子っぽいものにあまり興味がなかったようです。一番印象に残っているのは、少し年上のいとこが、板に足を付けたような簡単なロボットを作って遊んでいたこと。面白そうだなと思って見ていました。

——今までで影響を受けた人は。

小学校5~6年生の担任の先生と、入社当時の直属の部長です。

小学校の先生には、人としての基本を教えてもらったと思っています。班長とか学級委員をさせてもらったのもその時ですが、とにかくよく叱られました(笑)。たたかれることもありましたが、子どもながらに納得できていたように思いますし、本当に子どもたちのことを考えてくれていた先生だと思います。
私はもともと運動が嫌いだったのですが、その先生は「体を動かすだけじゃなく、頭を使え」と指導してくれました。私にはそれがとても納得できて、おかげで体育が好きになって、体力もつきました。マラソンで初めて表彰されて、「納得してがんばれば多少は何とかなるんだな」と思いました。

——では入社当時の部長は。

当時はまだ女性が、特にエンジニアとして働き続けるのは難しくて、結婚や出産で辞めるとか、自由に発言しにくいという時代でしたが、男性中心の職場ながら、最初から分け隔てなく扱ってくれました。とても感謝していますし、「部長がいなかったら私も今ここにいない」というくらい、影響力があったと思っています。

自分のアイデアで製品を作ってみたい

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「自分のアイデアで新しい製品を作ってみたい。」

——これからやってみたいことはありますか。

今まで関わってきたシステムは、ベースのシステムを強化、改良する仕事が多かったので、まったく新しいものを最初の企画から作っていくことも、一度はやってみたいです。常に技術が進歩しているので、情報を収集して企画に結びつけるのは大変だと思いますが、自分のアイデアで製品を作れたらいいなと。

——最後にエンジニアに挑戦したい女性にメッセージを。

「女性だから」などとあまり気にしないで、自分のやりたいこと、納得できることに挑戦してみるといいのではないかなと思います。やってみなければ何も始まらないですし、やってみて「違う」と思っても無駄にはなりません。仕事をしていれば楽しいことばかりではありませんが、少なくとも私は納得できている。そこが大事なのではないかと思っています。納得できる仕事をしながら、自分の目指したい姿を描いていってほしいと思います。

女性のエンジニアは増えてきたものの、それでも少ないのが実情です。良くも悪くも「女性」とみられます。
ぜひ自分の味方を作ってほしいと思います。いざという時、きっと助けになります。
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