- 2017-5-26
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- Nature Energy, フラウンホーファー・太陽エネルギーシステム研究所, ヘルムホルツセンター・ベルリン研究所, 反転変性多接合, 独イルメナウ工科大学, 米カリフォルニア工科大学, 米国エネルギー省再生可能エネルギー研究所(NREL)
米国エネルギー省再生可能エネルギー研究所(NREL)は、光電気化学的手法による水素製造効率で新記録を達成したと発表した。
この国際研究チーム(コロラド州のNREL、独イルメナウ工科大学、ヘルムホルツセンター・ベルリン研究所、フラウンホーファー・太陽エネルギーシステム研究所および米カリフォルニア工科大学)が達成した水素製造効率は16.2%で、2015年に記録した14%を上回るものだ。
光を吸収するタンデム(多接合)半導体を酸性の電解液に浸し、太陽光のみをエネルギーとする水分解反応によって電気を得るとともに、電解液から水素を発生させる方法は、NRELのジョン・ターナー氏が90年代に開発したものだ。今回はそれを発展させた反転変性多接合(IMM:inverted metamorphic multijunction)と呼ばれるデバイスを使って、水素製造効率を向上させることに成功した。研究成果はNature Energy誌に掲載されている。
ジョン・ターナー氏を含む研究チームは、従来のガリウム砒素(GaAs)をインジウムガリウム砒素(InGaAs)で置き換えることで、効率を大幅に向上させた。さらに、デバイス上にアルミニウムインジウムリン(AlInP)の薄膜などを追加し、表面の欠陥の除去と腐食性の酸性電解質から保護することに成功した。
ただし、この方法が商業的に成立するためには、水素1キロあたり2ドル未満を達成する必要があるとしている。これには、セルの効率と寿命が大きく関係しており、特にセルの耐久性を現在の数時間から大幅に延ばす必要がある。NRELの研究者達は目標の達成に向けて、セルの効率と耐久性に関する研究を活発に行っているという。