単一NVダイヤモンド量子センサーで世界最高感度を実現――合成n型ダイヤモンドで室温での世界最長電子スピンコヒーレンス時間を記録 京都大学

ダイヤモンド中のNV中心の構造

京都大学は2019年9月2日、同大学の研究グループが、人工的に合成したリンドープn型ダイヤモンドを用いて、NV中心(窒素-空孔中心)の室温での世界最長スピンコヒーレンス時間(T2)と、単一NV中心を用いた量子センサーとしては世界最高の磁場感度実現に成功したと発表した。

NV中心は室温でも長いT2を有しており、超高感度量子センサーや量子情報素子の実現や、量子センサーの生命科学分野への応用などの面から注目されている。また、量子センサーではT2が長いほど感度が良くなる。

これまでのNV中心の研究に一般的に使用されてきたのは、不要な電子スピンを持たず、比較的T2や感度の特性が良かった不純物をドープしない絶縁体のダイヤモンドだ。

一方、研究グループは以前から、高品質なリンドープn型ダイヤモンド中の単一NV中心における電荷安定性を研究していた。今回、産業技術総合研究所が合成する高品質のリンドープn型ダイヤモンドの電荷状態安定性の研究を行う中で、一定のリン濃度試料において、世界最長レベルの長いT2を有するNV中心が存在することを発見した。

具体的には、系統的にリン濃度のみを変えた試料を測定し、リン濃度が1立方センチメートル当たり10の16乗程度の場合に、これまでの室温におけるT2最長報告値である1.8ミリ秒を超える2.4ミリ秒を実証した。

また、T2最長の単一NV中心における交流磁場感度を見積もり、単一NV中心の室温における世界最高値9ナノテスラ/√Hzであることも実証した。さらに、直流磁場センサーにとって重要な数値である自由誘導減衰時間(T2*)も、従来の最長報告値0.47ミリ秒を超える1.5ミリ秒を実証した。

今回のn型ダイヤモンドによる最長T2の実現は意義深く、今後は多数のNV中心を一度に計測することでより高い感度が要求される核磁気共鳴や心磁計、脳磁計への応用や、さらなる高度化によるn型半導体の特性を生かした電子デバイスへの応用などが期待されるという。

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