電気を使わない冷却システムを開発――一般的なエアコンより21%の電力を削減可能

スタンフォード大学電気工学科のShanhui Fan教授の研究グループは2017年9月4日、電気を必要としない冷却装置の成果を「Nature Energy」に発表した。

同研究グループが発表した冷却装置は一般的な屋根のような形状で、大気放射冷却の原理と光学技術を組み合わせた装置だ。2013年から研究を続け、今回は規模を拡大した装置でデータを集め、実際にどれほどの電力を削減できるかシミュレーションした。

「大気放射冷却」と言うと難しく聞こえるが、実は日常でもよく見られる現象だ。簡単に言うと、物質が熱を空気中に発散し、それによって物質の温度が下がる。夜に道路のアスファルトが熱を放射することによって冷えるのが身近な例だ。

Fan教授らの装置の表面は、複数の光学フィルムを重ね合わせて鏡のようになっている。この光学フィルム層が太陽光の約97%を反射し、装置自体が太陽光によって温められるのを防いでいる。

そして大気放射冷却によって、光学フィルム層の下に流れる水を周囲の温度以下に冷やすのだ。

今回発表された論文では、装置が動作することだけでなくシステムとして実際に電力削減につながることを証明した。パネルは一辺が約61cmの正方形で、最大4枚のパネルを同時に稼働。3日にわたって稼働させたところ、パイプを流れる水の温度は、周囲の温度に比べて3~5℃、冷たくなった。

さらにその実験データを用いて、ラスベガスのような熱く乾燥した地域にある2階建て商業ビルを想定し、電力をどれほど削減できるかシミュレーションした。

エアコンの代わりに、同冷却装置を使って蒸気圧縮機を冷やすという設定でシミュレーションしたところ、夏の期間にはビルを冷やすことに使う電力の21%を削減可能だと試算できた。

Fan教授らはSkyCool Systemsという会社を立ち上げている。この電気の要らない冷却装置技術が数年以内にさまざまな用途で利用されるようになると見込み、一般的なエアコンや冷蔵庫の冷却装置として簡単に組み込める手法や、データセンターでの利用方法について研究開発していく考えだ。

関連リンク

Stanford professor tests a cooling system that works without electricity

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る