東北大と東工大、高い電荷注入効率を持つ有機半導体用電極を開発

新しい電極の電界発光素子への応用。上:素子構造、下:上から見た発光の様子

東北大は2017年10月17日、東京工業大学と共同で、高い電荷注入効率を持ちしかも空気中で安定な新しい有機半導体用電極を開発したと発表した。

従来のシリコンなどを用いた無機半導体と比較して、有機半導体は柔軟で軽量、プロセスが容易など多くの優れた特性を持つ。このため、次世代の半導体材料として期待されている。しかし、有機半導体は電荷を運ぶ粒子(正孔および電子)の電極からの注入効率が悪いことが課題であり、特に電子の注入効率は正孔に比べ著しく劣っていた。

今回の共同研究では、金属/有機多結晶半導体/テトラテトラコンタン(鎖状炭化水素分子の一種)の3層構造を持つ電極を新たに設計。この電極が、従来の有機半導体用電極で用いられてきた金およびカルシウムよりも優れた電荷の注入効率を示すことを実証した。また、正孔と電子を同等の効率で導入できるという。

有機半導体単結晶を用いた電界効果トランジスタに今回の電極を応用したところ、従来の金電極からの正孔注入およびカルシウム電極からの電子注入よりも大きな電流を流した。さらに、従来の電極では電子と正孔の注入の向きを入れ替えるとトランジスタとして動作しないが、この電極は入れ替える前と同等に動作することも確認。この結果を踏まえて、空気中で安定しないカルシウム等を用いずに有機単結晶発光トランジスタの作製に成功した。これらのことは、空気中での安定性など、素子に求められる条件を満たす任意の金属を用いた高性能な電極を作製できることを示しているという。

同研究グループは、新しい電極は、基礎科学の観点から重要なだけでなく、高性能な電界発光素子などの電極として期待されるとしている。

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