- 2019-12-26
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Physical Review Fluids, Wassim Dhaouadi, スイス連邦工科大学ローザンヌ校, 光学干渉法, 気泡, 科学法則
垂直に置かれた細管中の気泡は、上昇することなく留まっているのは何故か、という科学者を100年間も悩ませてきたミステリーを、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の、学部学生が解明した。この成果は2019年12月2日、『Physical Review Fluids』誌に掲載された。
コップの中の水の気泡は、水面まで自由に浮かび上がる。そのメカニズムは基礎的な科学法則で簡単に説明できる。それに対し、細管の中の気泡は動かず、同じ場所に留まっている。物理学者は約1世紀前にこの現象を発見したが、同じ法則では説明できなかった。1960年代のある研究により、気泡と管の壁の間にできる液体の薄膜のために気泡が上昇しないという仮説が登場したが、これを完全に証明する試みはなされていなかった。
研究当時に学部生だったWassim Dhaouadi氏は、夏期の研究助手として研究室に加わり、世界で初めてこの薄膜を測定し、その特性の説明に成功した。測定には光学干渉法を用い、細管の中の気泡に光を当て、反射光の強度を分析した。管の内壁からと気泡の表面からの反射光の干渉を用いて、薄膜の厚さを正確に測定したところ、その厚さはわずか数10ナノメートルだということを突き止めた。
さらにこの測定により、気泡は仮説のように動かず止まっているのではなく、実際にはとてもゆっくりと上昇していることが分かった。気泡と管の間の膜はとても薄く、流れに対する強い抵抗が生じて気泡の上昇を抑えるため、人間の目には止まっているように見えるとしている。