~ 自動車業界の技術トレンドを各分野から見る ~
本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・北村 喜代憲氏、陣内 健志氏への取材記事です。自動車業界の技術トレンドについて、機械系・電気系・ソフトウェア系・化学系といった専門分野別に考え、エンジニア市場の変化、求められるマインド・専門性などのエンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。
3回目の今回は、「機械系エンジニアの仕事ではない」と思われるモーターや電池といった分野で機械系エンジニアが必要とされている――というお話をご紹介します。(執筆:中嶋嘉祐)
――前回、電気自動車(EV)になっても「駆動源がエンジンからモーターに置き換わるものの、駆動源の動力を効率的に伝える機構を考えるのは、引き続き、機械系エンジニアの仕事」になると伺いました。
EVになるとモーター以外に、電池も主役になります。さすがに電池関連の開発となると化学系エンジニアの出番だと感じますが――。
[メイテックネクスト 陣内健志氏]実は電池関連のプロジェクトこそ、機械系エンジニアのニーズが最も強くなっています。機械系エンジニアが必要なのに、人材の採用が追いついていない。EV関連の機械系エンジニアの仕事の中で、最もエンジニアの採用に困っているのが電池の領域です。
[メイテックネクスト 北村喜代憲氏]EVに載せる電池の電解液や触媒の研究・開発は、もちろん化学系エンジニアが扱います。
けれど、電池の構造設計や、車体に電池を置くレイアウト、電池を量産する生産技術など、機械系エンジニアの力が求められる仕事は非常に多いのです。
要素技術でマッチング、大学時代の研究で選考が進むことも
[陣内氏]自動車メーカーとしては、とにかく電池関連の仕事に携わる機械系エンジニアの採用には困っています。
「電池に使う材料の知見を持っている」「電池を自動車に載せると問題になる熱の扱い方に詳しい」といったように、機械系エンジニア一人一人の得意分野を踏まえながら、知見・専門性に合った仕事をマッチングさせている状況です。
もっと言うと、中途でエンジニアを採用するとなると、即戦力として活躍できるかを判断するため、前職・現職での実務経験を非常に重視するのが一般的です。
けれど自動車関連のメーカーは、本当に電池関連の仕事ができる機械系エンジニアを採用できていません。ですから実務経験を問わず、「電池に使うある要素技術をこれまでに業務で扱ったことがある」「大学時代に電池関連の研究をしていた」といった経験を持っていれば、とにかく1度会ってみよう――と採用条件を緩めるようになっています。
[北村氏]電池の話が中心になりましたが、完全自動運転やコネクテッドカーの実現に向けて、多種多様なセンサーや通信機器が自動車にも積まれるようになってきました。
電池にしてもセンサー・通信機器にしても、自動車に新しい技術が積み込まれるときには、その技術そのものを研究・開発している電気系・化学系エンジニアに加えて、その技術を使った製品を開発・生産してきた機械系エンジニアの採用ニーズも高まります。
自動車にはさまざまな新しい技術・部品が追加されるようになってきていますから、「自分の強み」「専門とする要素技術」についてしっかりと分かっている機械系エンジニアにとっては、異業種からでもキャリアチェンジしやすい状況になっていると言えるでしょう。
北村 喜代憲(メイテックネクスト 機械・メカトロ分野 コンサルタント)
消費財メーカーで生産管理のエンジニアとしてキャリアをスタートしたものの、転職活動の中で、転職の可能性の大きさへの期待や、その逆の不安など様々なことを感じる。その経験を活かして現職に至る。
陣内 健志(メイテックネクスト 機械・メカトロ分野 コンサルタント)
約6年間、自動車部品メーカーにて生産技術職を担当し、主に国内及び海外向けの生産設備の立上に従事。ものづくりの大変さと面白さを学び、その経験を活かしてエンジニア目線でのキャリアサポートをしたいと考え、現職に至る。