水の電気分解により水素を大量製造できるハイブリッド触媒を開発

水の電気分解を加速するハイブリッド触媒

ヒューストン大学とカリフォルニア工科大学の共同研究チームが、水の電気分解を加速する安価なハイブリッド触媒を考案した。これまで必要だった2種類の触媒に対して、1種類の触媒で水素生成と酸素生成の両方を加速し、従来の白金族触媒を超える電気分解速度を達成し、大規模工業レベルで水素を大量製造できると期待される技術だ。研究成果は、2018年6月29日の『Nature Communication』誌に公開されている。

水素はクリーン・エネルギーとして、電気自動車向けの燃料電池や、内燃機関における燃焼や、多数の産業用途に用いられつつある。さらに水素は圧縮液化できるので、他のエネルギーよりも貯蔵が容易であるなど、水素社会に対する期待は大きい。

現在、大部分の水素は、水蒸気メタン改質および石炭ガス化により、化石燃料を基に製造されている。しかし、これらのプロセスでは大量の炭素系副産物を生成し、結果として排出CO2量を顕著に増加させることになる。一方、化石燃料を必要としない水の電気分解においては、触媒として高価な白金族元素が必要であり、水素の大量製造プロセスとしては現実的でない。

ヒューストン大学物理学科教授Zhifeng Ren氏らの研究チームが考案した新しい触媒は、リン化鉄とリン化2ニッケルから構成され、市販の発泡ニッケル表面上に固定されている。水の電気分解では、通常、2種類の触媒が必要で、1つは陰極で水素を分離する反応を促進し、もう1つは陽極で酸素を生成する。それに対して今回の新触媒では、1つで両方の機能を果たし、優れた二元機能触媒であることが判った。

さらに研究チームは、「新触媒は、酸素生成反応と水素生成反応の両方において、非常に高い活性を示す。実際、同じアルカリ水溶液の電気分解における新記録、1.42Vの電圧で1平方センチあたり10mAの電流密度、即ち電気分解速度を達成した。これは、同じ電圧レベルにおける、酸化イリジウムと白金を組み合わせた触媒の性能を凌駕する。1.72Vの電圧では、実用的な電流密度レベル1平方センチあたり500mAを達成し、40時間以上の試験でも安定に保たれた」と説明している。

この新触媒は短時間で大量の水素を製造でき、水素を生成するのに必要なエネルギーを劇的に減少させる可能性がある。また白金族の触媒と異なり、地球に豊富にある元素をベースとしている。このようなことから、開発された技術は、水素を大量に製造できる、実際的で安価な、環境に優しい理想的なプロセスになると期待されている。

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