横浜国立大学は2018年8月7日、東京大学との研究グループが、揮発しない液体であるイオン液体を溶媒とする「イオンゲル」に、室温での自己修復性を付与することに成功したと発表した。強度が高くイオン伝導性にも優れることから、IoT用フレキシブル電子デバイス材料としての応用も期待できるという。
イオンゲルは溶媒揮発がなく、大気下で高い長期安定性を示す。しかし、機械的にもろくすぐ破断するというゲル共通の欠点は未解決だった。水を溶媒とするハイドロゲルでは高強度化/自己修復性の付与が様々に検討されてきたが、イオンゲルでは多くは検討されてこなかった。
今回の研究では、イオン液体に溶けない成分とイオン液体中で水素結合を示す成分を持つブロック共重合体を精密合成し、イオン液体と複合化することでイオンゲルを創製した。合成したブロック共重合体はイオン液体中で凝集してミセル構造(溶媒と親和性が低い部分が凝集し、その周りを溶媒と親和性の高い部分が囲むことで形成される球状構造)となり、ミセル間の多点水素結合を結合点としてゲルネットワークが形成される。
このイオンゲルを切断したのち切断面を接着すると、室温においてすばやく傷が修復することがわかった。これは、可逆性を持つ弱い結合であるミセル間の水素結合が切断面で自発的に再形成したためと考えられる。また多数の高分子が集合したミセル構造を導入することで、高い自己支持性や優れた力学強度を示すことがわかった。さらに、自己修復前後で同等の電気化学的特性を維持することもわかった。
今回開発されたゲルは、高い機械強度、迅速な自己修復性、優れたイオン伝導性や成型加工性などの特性を持つ。このため、キャパシターやアクチュエーター等のフレキシブル電子デバイス材料への応用が期待される。