東レ、樹脂化を大幅に進めたEVコンセプトカー「I toP」を発表――強度・剛性を保ちつつ車両の47%を樹脂化

コンセプトカー「ItoP」

東レ・カーボンマジックは2018年9月28日、新素材「しなやかなタフポリマー」などを使って樹脂化率を飛躍的に高めた電気自動車コンセプトカー「I toP」(Iron to Polymer、アイトップ)を発表した。科学技術振興機構(JST)のImPACT(内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム)の一環として取り組んだ成果だ。

しなやかなタフポリマーは、輸送機器の構造材や構成部品に適用することで、軽量性や機能性、安全性、信頼性を向上させる可能性がある。今回はその可能性を検証するために、同素材を活用し、その具体的な適用効果を示すためにコンセプトカーを作製。車両の樹脂化を従来比4倍の47%にまで進めた。

外観形状は、しなやかさとタフさを両立させ、ボディ全体を樹脂化することで初めて可能になるデザインコンセプトを採用。連続的な曲面による面構成や大きなグラスエリアとドア開口、独立したフロントフェンダー、カバーされたリアホイールなど、デザインだけではなく優れた空力性能も有する。

I toPのデザイン

 

I toPの上面図

 

空力解析

軽量性および高剛性、対衝突性能を考慮して車両フレームは外板ボディも兼ねたモノコック構造を採用。デザインの自由度を高めるとともに部品点数を削減するなどにより、従来の金属モノコックフレームと比較して50%以上の軽量化を進めた。

モノコックボディ

 

サスペンション部分は従来樹脂化が困難と言われてきたが、今回開発した環動ポリマー構造を導入したCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いることで、サスペンション部分に必要な性能を達成した。主要な構成部品をはじめ、大変形を伴うスプリング部分にもCFRPを採用した。フロントにはダブルウィッシュボーンサスペンションのアームを兼ねるリーフスプリング式、リアにはコイルスプリング式を採用。いずれも繰り返し変形に耐えうる疲労特性を確認した。

フロントサスペンション

リアサスペンション

 

その他、高剛性と高タフネス性を両立した透明樹脂ウインドガラスや、専用の省エネルギータイヤを新たに開発して搭載。環動ポリマー構造のポリアミドとグラスファイバーの複合体からなる衝撃吸収体を側部と前部に配した他、電池ボックスにもCFRP素材を用いた。

リアガラスユニット

タイヤとホイール

前部クラッシュボックス

側部クラッシュボックス

バッテリーパック

 

これらにより、車両重量は従来と比較して38%の軽量化に成功。その結果、製造工程も含めた10万キロメートル走行時点での温室効果ガス排出力は、従来の鉄などを使用した場合と比較して11%低減できる可能性があるという。

関連リンク

プレスリリース(東レ)
プレスリリース(JST)

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