- 2018-11-28
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Daniel Goldman, Michael Strano, MIT, syncell, グラフェン, ジョージア工科大学, ピタパン, マイクロアレイプリンター, 微小デバイス, 自己穿孔(autoperforation)
MITのエンジニアチームは、グラフェンのような原子レベルで薄い脆性材料の自然破壊プロセスを利用して、細胞サイズの微小デバイスを大量生産する方法を開発した。この方法で作られた「syncell」と呼ばれる微小デバイスは、石油やガスのパイプライン内部の点検や、血流に乗って体内を移動し病巣を探すなどの用途が考えられるという。
チームの開発した方法は、マイクロアレイプリンターを使って、グラフェンの層の上にエレクトロニクスの入った小さなポリマーのドットをマトリクス状にプリントし、その上にグラフェンの層を重ねるというものだ。円柱状のポリマーに接したグラフェンは円柱に沿って応力集中が生じるため、特定の条件でグラフェンに脆性破壊を起こさせることで、ナノスケールの穿孔器で切り出したような丸い形のグラフェンの断片を大量に生み出すことができる。その大きさは人間の赤血球の10倍ほどだ。
この「自己穿孔(autoperforation)」と名付けられた新しい方法で作られたsyncellは、2枚のグラフェンでポリマーを挟んだ「ピタパン」のような構造をしている。syncellは、中に入れるエレクトロニクスによって、移動、化学物質の検出、記憶などの能力を持たせることができる。MITのMichael Strano教授によれば、このような細胞サイズのロボットデバイスを使うことで、例えばパイプラインの一端に多量のsyncellを注入し、他端で回収して内部の状態に関するデータを収集するなど、多彩な応用例が考えられるという。
また、ジョージア工科大学のDaniel Goldman教授は、「Strano教授のチームの開発した技術は、ひとつでは実行できない処理を行うための微小インテリジェントデバイスを製造する可能性を持っている。」と、研究を評価している。今後の発展が注目される研究のひとつといえるだろう。