宇宙空間でボーズ・アインシュタイン凝縮体の生成に成功

独ライプニッツ・ハノーファー大学らの研究チームは、初めて宇宙空間で原子気体からボーズ・アインシュタイン凝縮体(Bose-Einstein condensates、BEC)を生成することに成功した。同時に、BECを用いて微小重力実験を行っており、今回その詳細な解析結果を発表した。研究成果は、2018年10月17日付けの『Nature』に掲載されている。

BECとは、原子気体が絶対零度に近い温度まで冷却されたときに、大部分の原子が最低エネルギー状態に収束する現象で、多数の原子が一つの波動関数で表される巨視的な量子状態、単一の物質波とみなすことができる。そのため、BECを干渉計に利用すれば、地球の重力場の測定、重力波の検出、アインシュタインの等価原理の検証などが高精度に実施できる。しかし、BECは重力加速度の影響を受けやすく、地上では観測時間が制限されるため、宇宙空間での実験が有利とされている。

研究チームは、実験用ロケットを2017年1月23日、スウェーデンのEsrange宇宙センターから発射し、15分のフライトの間に、BECの生成と特性評価をはじめ、高精度干渉計の基本実験など、110種類のMAIUS-1ミッションを遂行した。

実験では、レーザーと磁場を用いてルビジウム原子気体を閉じ込め、絶対零度からわずか数十億分の1以内まで冷却。生成したBECは数百ミリ秒にわたって観測でき、それを計測に使用することもできた。

また、研究チームはBECの輸送も試みた。原子チップによって生成した磁気トラップ内の原子の動きは予測と非常に近く、BECが輸送可能で再現性も高いことを実証した。この方法を利用すれば、さらに低温のBEC生成が可能になる。

「今後のミッションでは、絶対零度から数兆分の1以内の低温状態が作れるだろう」と研究チームは語る。これほど低い温度では、原子の速度は劇的に遅くなるため、観測時間が数秒に延び、地球上では考えられないほど高精度の計測ができるようになるかもしれない。

研究チームは今後、2020年と2021年に打ち上げるロケットでMAIUS-2、MAIUS-3ミッションを遂行する予定だ。同ミッションでは、ルビジウム原子だけでなく、カリウム原子についても実験する。それぞれの重力加速度を比較することで、アインシュタインの等価原理の検証が期待される。

今回の研究結果は、NASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同で行う、国際宇宙ステーション(ISS)でのBECCAL実験にも反映される予定だ。

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Bose-Einstein condensate generated in space for the first time

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