スーパーコンピューターで原子レベルの応力分布を解析――応力テンソルの非対称性が明らかに

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XSEDEを通じて共同利用できる、JetstreamとCometのスーパーコンピューターシステム

アイオワ州立大学の研究チームが、アメリカにおけるスーパーコンピューター共同利用の枠組み「XSEDE」を活用して、原子レベルの応力分布解析を実施し、連続体理論で前提とされる応力テンソルの対称性が正しくないことを明らかにした。XSEDEを通じて、カリフォルニア大学サンディエゴ校のCometシステム、およびテキサス大学のJetstreamクラウド環境という2つのスーパーコンピューターシステムを利用して、24万個の原子から構成される単結晶モデルで分子動力学シミュレーションを行ったものだ。研究成果は、2018年9月5日の『Proceedings of Royal Society A』誌に公開されている。

XSEDEは、スーパーコンピューターへのアクセスを各研究機関に提供し、科学技術をサポートするプラットフォームとして構築されている。日本においても、「京」を含め全国の研究機関に設置されたスーパーコンピューターを高速ネットワークで結び、多様なユーザーニーズに応える共用計算環境「HPCI」が構築されている。

材料の結晶中には、転位や微小亀裂、相界面など多数の不均質構造があり、外力により大きな応力集中を発生し、材料の強靭性や疲労などに決定的な影響を与える。広く受け入れられている連続体力学では、微小変形、微小変位を前提とした場合、応力集中部の直角座標系における応力テンソルが対称性を持つという大前提の仮定がある。

ここで研究チームは、従来の連続体モデルではなく、一個一個の原子の周りの力学的相互作用を計算することにより、応力テンソルを求めることを試みた。研究チームのLiming Xiong助教授は、「ミクロンサイズの結晶でも数十億個の原子を含むため、相互作用する原子間力を取り扱う場合、その計算量は膨大になり、著しく大きな計算能力が必要になる」と、その課題を説明する。

研究チームは、24万個の原子から成る単結晶モデルにおいて、LAMMPS分子動力学シミュレーターを用い、これにLennard-Jones原子間ポテンシャルを導入してシミュレーションを行った。まず、Jetstreamによりコンピューターコードを開発し、デバッグおよびテストを行った。Jetstreamは、クラウドによる監視機能によりデバッグを行うのに非常に優れている。次に、開発したコードをペタスケールのCometシステムに導入し、数百から数千のプロセッサを用いた大規模シミュレーションを実施した。その結果、材料中の応力分布は、原子レベルにおいて非対称であること、また、広く用いられてきた応力公式は、応力集中部近傍の応力を著しく過小評価していることを明らかにした。

このシミュレーション研究は、マルチスケールモデリングと呼ばれる手法であり、ミクロとマクロの世界の間を橋渡しするのに役立つ。Xiong助教授は、この手法によって原子レベルから材料特性や挙動を予測することができるため、新材料の設計や迅速な開発に極めて有効だと、期待を明らかにしている。

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