三角格子反強磁性体に逐次的に現れる複数の新たな磁気相を発見――電子スピン共鳴を利用 東北大学など

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東北大学金属材料研究所付属強磁場超伝導材料研究センターは2019年4月24日、圧力によってスピンS=1/2三角格子反強磁性体Cs2CuCl4の結晶を歪ませ、交換相互作用を精密にコントロールし、25テスラまでの強磁場下で電子スピン共鳴という手法で調べることで、逐次的に現れる複数の新たな磁気相を発見したと発表した。

今回の研究成果は、独Helmholtz-Zentrum Dresden-RossendorfのS. A. Zvyagin研究員、米National High Magnetic Field LaboratoryのD. Graf研究員、神戸大学研究基盤センターの櫻井敬博助教、大阪府立大学理学系研究科の小野俊雄准教授、東京工業大学理学院物理学系の田中秀数教授らとの共同研究によるものだ。

三角格子反強磁性体では、三角格子上に配置した電子スピンが互いに反強磁性的な交換相互作用を及ぼし合う。全ての磁気相互作用を満足させる安定状態が存在しない幾何学的なフラストレーションと呼ばれる状態を持ち、多数の状態がせめぎ合っていることが知られている。そのため、小さな刺激で状態が劇的に変わることが予想されていた。

中でもスピン量子数S=1/2の場合、量子揺らぎの効果とフラストレーションが相俟って、多彩な量子相が現れることが期待されてきた。具体的には、正三角形の形から歪みを加えてずらすことで、スピン間の交換相互作用の比を変えると、量子相転移が起こると予言されている。さらに磁場を加えると、量子ゆらぎの大きさも制御出来るため、出現する相はさらに多様になる。

この予想を検証するためには、交換相互作用の制御とスピンの偏極の制御の2つを同時に行う必要があるが、実験が難しいため研究が進んでいなかった。そこで研究グループは、スピンが最小の値である1/2を有し、正三角形から歪んだ構造をもつ三角格子反強磁性体Cs2CuCl4に高圧を加え、同時に強磁場を加えることで、ほぼ連続的な交換相互作用の比の変化と磁気偏極の大幅な制御に成功した。

さらに、この状態での磁気的な性質を決定するために、電子スピン共鳴測定という方法を利用して、逐次的な量子相転移を発見した。この研究では、歪みにより交換相互作用がどの程度変わったかを決定する事が必要だが、高圧と強磁場の複合極限下でこれが可能なのは、電子スピン共鳴だけだという。相境界の決定には、共鳴トンネルダイオード測定も用いた。

発表によると、25テスラの強磁場を液体ヘリウムなしに発生可能な無冷媒型超伝導磁石と、高圧セルを用いた電子スピン共鳴実験が、この研究を成功させる上で重要な役割を担ったという。高圧の印加によって相互作用を精密に制御し、これに強磁場を加えることで新たな磁気相を発見した今回の研究成果は、極限環境下でのフラストレート磁性体における量子相転移の研究に新しい可能性をもたらすとしている。

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