- 2019-3-22
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- CI値(Carbonyl Index), CLAIM H 2020プロジェクト, Environmental Chemistry Letters, HORIZON 2020, Joydeep Dutta, スウェーデン王立工科大学(KTH), フーリエ変換赤外分光分析(Fourier-transform infrared spectroscopy), マイクロプラスチック, 不均一系酸化亜鉛(ZnO), 低密度ポリエチレン(LDPE), 動的機械分析(dynamic mechanical analyzer)
スウェーデン王立工科大学(KTH)の研究チームが、「CLAIM H 2020プロジェクト」の一環として、可視光応答型の不均一系酸化亜鉛(ZnO)光触媒のナノコーティング技術を開発し、低密度ポリエチレン(LDPE)マイクロプラスチックを水中で分解するのに成功した。研究成果は、『Environmental Chemistry Letters』誌に掲載されている。
マイクロプラスチックは、破棄されたプラスチック製品が破砕、流出し、微小なプラスチック粒子として海洋環境に存在するもので、近年生物濃縮による人間への影響も注目されている。現状、対策として濾過、焼却、オゾン処理などの手段が取られているが、これらの手段は高いエネルギーを要し、不要な副産物を生む。
CLAIM H 2020プロジェクトは、安価で毒性のないマイクロプラスチック分解技術として、下水処理場に配置される小型の光触媒反応装置を開発するというもの。全ヨーロッパ規模で実施されている研究及び革新的開発を促進するための発明・研究に関するフレームワーク「HORIZON 2020」の一環として実施されている。
研究チームは開発したZnO光触媒を使い、LDPEマイクロプラスチック残留物がどれだけ分解できるか試験した。触媒反応をフーリエ変換赤外分光分析(Fourier-transform infrared spectroscopy)、動的機械分析(dynamic mechanical analyzer)、そして光学観察によって調べたところ、高分子残留物の分解を示す指標であるCI値(Carbonyl Index)に30%の上昇が見られたという。また残留物の表面に、しわ、亀裂、空洞が生じることが確認された。
研究チームとして参加するKTHのJoydeep Dutta教授は「人工光のもとでナノコーティング触媒を使ったLDPEの分解効率において、かなり良好な結果を示すことができた。実際の環境下では、ナノコーティングを施すだけで、後は太陽光の力で自然にマイクロプラスチックが分解されるだろう」と、その効果を説明する。