伸縮性・自己修復性を備えた透明な電子スキンを開発

シンガポール国立大学(NUS)の研究チームが、クラゲのように透明で、伸縮性があり、タッチセンシティブで、水の中で自己回復する電子スキンを開発した。この電子スキンは防水タッチスクリーンから、水中で動作するソフトロボットに至るまで、幅広い用途に使うことができる。

今回の研究は、清華大学やカリフォルニア大学リバーサイド校の研究者と共同で行ったものだ。研究チームリーダーのBenjamin Tee助教授は、2012年に発表された自己修復電子スキンセンサーの開発者の一人だ。「現行の多くの自己修復材料が抱える課題は、それらが透明ではないことと、濡れると効率的に機能しないことだ」とTee助教授。「雨天時にも使用される電子機器、例えばタッチスクリーンでは、これらの欠点を抱えるものは役に立たない」と語る。

そこでTee助教授は、透明で耐水性があり、タッチセンシティブという、クラゲの皮膚のような素材の開発を試みた。そして1年間の研究の成果として、フルオロカーボンをベースとしたポリマーと、フッ素に富むイオン溶液を組み合わせた新たなゲル素材の開発に成功した。

このゲル素材は伸縮性があり、最大で20倍に伸びる。仮に切断されても、その断片を互いに接触させて水に漬けておけば、ポリマーが可逆的なイオン-双極子相互作用を介してイオン溶液と結合、1分ほどで導電性を回復し、数時間~数日経てば完全に元通りに修復するという。

一般に、ハイドロゲルなどの導電性ポリマーは、水に浸すと膨潤し、空気中で乾燥すれば収縮する。一方、開発されたゲル素材は、湿った環境でも乾いた環境でも、その形状は変化せず、海水や酸性、アルカリ性の環境でも機能する。

電子スキンは、このゲル素材上に電子回路を印刷したものだ。Tee助教授は「私たちが開発した電子スキンは、3Dプリンターで作製できる。ロボット用に透明な回路基板を作ることができれば、ソフトロボットのアプリケーション開発に提供できる」と述べている。

関連リンク

Transparent and self-healing electronic skin

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る