「原子も凍る」超伝導量子冷凍機――1mKの極低温を達成

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超伝導量子冷凍機の磁化および消磁に伴う冷凍メカニズム

ロチェスター大学とイタリアNESTの共同研究チームが、ほぼ絶対零度にまで冷却できる超伝導量子冷凍機を考案した。家庭用冷蔵庫が断熱膨張/圧縮のサイクルを利用して冷却するのと同様、超伝導体の断熱磁化/消磁のサイクルを利用して、10mK以下の領域を実現した。研究成果は、2019年5月13日の『Physical Review Applied』誌に公開されている。

外部磁場により磁化した磁性材料に対して断熱的に磁場を解除すると、磁気スピンがランダム化することにより温度が低下することが知られている。この原理を活用した「磁気冷凍技術」は冷凍効率が高いことから、液体ヘリウムの「蒸発潜熱冷却」でも達成できない1K以下の極低温領域を実現する冷却技術として注目されている。この領域を実現する他の冷却技術として、ヘリウムの同位体3He相を別の同位体4He相に注ぎ、希釈する際の希釈潜熱を利用する「希釈冷凍技術」も開発され、更に低温の100mK以下の冷却が可能になっている。

研究チームは、限りなく絶対零度に近い10mK以下の領域の冷却技術を追求する中で、超伝導体における断熱的な磁化と消磁のサイクルを利用することに着目した。超伝導状態においては、逆向きのスピンをもつ2つの電子が、クーパー対と呼ばれる電子ペアを構成している。そのような超伝導状態に、外部から磁場を断熱的に付加すると、クーパー対が分離することにより温度が低下する。この効果を利用することにより、10mK以下の極低温領域を実現するものだ。

研究チームは、既に200mKから10mKの範囲に予備冷却されている3He-4He希釈冷凍機の中に、超伝導Nbおよび超伝導Ta、金属Cuから構成される複合体を設置した。最下層Nbは冷蔵庫の裏側にある放熱器に相当し、中間層Taは冷蔵庫の冷媒に相当する。また、最上層Cuは、食料品を直接冷却する冷却室の役割を果たす。

Nbに電流を流すと周囲に磁場が発生するが、この磁場がTa層に侵入して、スピンが逆向きに揃ったクーパー対を分離し、通常スピン状態に変化させることによりTa層を冷却。そしてTa層は順次Cu層を冷却する。その後、電流を遮断して磁場を解除すると、Ta層の電子が再びクーパー対を復元し、Ta層の温度は上昇するが、過剰な熱はNb層に放熱される。このサイクルを繰返すことにより、Cu層が連続的に冷却され、10mKに予備冷却された 3He-4He希釈冷凍機を用いた場合、最終的に1mKまで冷却することができた。

研究チームのロチェスター大学のAndrew Jordan教授は、「開発された超伝導量子冷凍機は、量子ビットを保存でき量子コンピュータの超高速化に貢献できる。また、光を効率的に測定できる量子センサや、MRIにおける深層部組織画像技術の開発にも寄与するものだ」との期待を明らかにしている。

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