従来より10倍厚い有機ELを開発――優れた発光効率、駆動電圧、耐久性 九州大学

九州大学は2019年7月30日、有機発光層を金属ハライドペロブスカイト層で挟んだ有機ELを、松島敏則准教授と安達千波矢教授らの研究グループが開発したと発表した。この有機ELはペロブスカイト層の総膜厚が2000nmもあり、従来の有機ELよりも10倍以上厚いにもかかわらず、優れた発光効率、駆動電圧、耐久性が得られるという。

研究グループによると、現在の有機ELの基本構造が見い出されてからの約30年間、「有機ELには薄い有機膜を用いなければならない」と考えられてきたという。有機分子は高い発光量子収率を示すが、電気を流しにくい。このため、有機ELには100nm程度(髪の毛の太さの約1/800)の薄い有機膜を用い、電気を強制的に流す必要があった。

しかし、このような極めて薄い有機膜は、大面積で均一に形成するのが難しかった。そこで、研究グループは、この既成概念を覆す有機ELの作製を試みた。そして、発光の機能を有機分子に、電気を流す機能をペロブスカイトに分担させることで、これに成功した。

研究グループは有機発光層として、高い発光効率を示すイリジウム化合物や熱活性化遅延蛍光化合物を採用。その両端に、電気を流しやすく透明な金属ハライドペロブスカイト層を設置した。こうして作製された有機ELは、従来の有機ELよりも10倍以上厚いにもかかわらず、最大で40%の極めて高い外部量子効率が得られる。

また、ペロブスカイト層の膜厚を調整することで、発光スペクトルの角度依存性を完全に消失させることに成功した。これは、斜めから見ても色味が変化しない高性能ディスプレイを作製するために必要不可欠な技術だという。研究グループは、本研究成果を活用すれば有機EL製品を安価に再現性良く作製できるいう。また、レーザー、メモリー、センサーなどの他の有機デバイスへの応用も可能だとしている。

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