ブラックホールによる重力赤方偏移を確認――20年以上にわたる観測でアインシュタインの相対性理論を検証

UCLAを中心とする国際研究チームが、超巨大ブラックホールに最接近した星から出る光を分析することにより、アインシュタインの一般相対性理論から帰結される現象を確認した。ブラックホールの持つ強大な重力場により、光の波長が変化する「重力赤方偏移」の測定に成功したもので、研究成果が、2019年7月25日の『Science』誌に報告されている。

一般相対性理論は、1915年にアインシュタインによって提案され、空間と時間は完全に分離されることはなく、極限的な条件下では混ざり合うことや、重力は空間と時間の曲がりから発生し、強大な重力場では光が曲がって進むことなどが予言された。これまでにも、太陽の近くを通る星の光の曲がりや、水星軌道のずれの観測により、理論の正しさが実証されたとされている。

研究チームは、1995年から20年以上かけて、銀河の中心にある超巨大ブラックホールの周りを公転するS0-2星からの光を観測することにより、一般相対性理論の検証を試みた。一般相対性理論によると、強大な重力場から放出される電磁波は、重力場から脱出するためにエネルギーが必要なので、放出された時点より波長が長くなって観測される。S0-2星は、太陽の約4百万倍の質量を持つ超巨大ブラックホールの周りを16年周期で公転するが、2018年4月から9月にかけてブラックホールに最接近する時期にあたる。この最も強大な重力場を通過する時期に、波長が赤色側に長くなる赤方偏移を確認しようとした。

研究チームは、ハワイの休火山の山頂にある、ケック天文台やジェミニ天文台、および日本のすばる望遠鏡も活用して、S0-2星から放出されるスペクトルの分光分析を行い、赤方偏移パラメータγを求めた。その結果、古典的なニュートン力学ではγ=0、一般相対性理論ではγ=1に対して、S0-2星の観測ではγ=0.88の結果が得られ、一般相対性理論による予測に近い赤方偏移を確認した。

研究成果は、一連の研究計画の最初のものある。研究チームは、殆どの星の公転周期が人間の寿命よりも長い中で、最も半径の小さい軌道を持ち、公転周期が11.5年であるS0-102星にも興味を持っている。「この研究は、超巨大ブラックホールと一般相対性理論について調査する先端的研究だ。アインシュタインの理論は、少なくとも今のところ、正しい」と、物理天文学科のAndrea Ghez教授は語る。そして、「古典的なニュートンの重力の法則は問題外で、我々の観察は、一般相対性理論に良く整合している。それでも、アインシュタインの理論は、ブラックホール内部の重力を完全には説明しきれていない。彼の理論を超える包括的な理論が必要だろう」との評価を述べている。

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Einstein’s general relativity theory is questioned but still stands ‘for now,’ team reports

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