軟X線自由電子レーザーをナノサイズに集光するシステムを開発――KBミラーと回転楕円ミラーを組み合わせたハイブリッド型 理研など

今回開発したハイブリッド型の軟X線FEL集光システム

理化学研究所(理研)は2019年10月2日、東京大学と高輝度光科学研究センターと共同で、軟X線自由電子レーザーをナノサイズに集光できるシステムを開発したと発表した。

軟X線は、波長が1~30nm程度の光を指し、試料の電子状態や磁性分布、化学組成などの分析に用いられている。軟X線には、多数の発振方法があるが、なかでもX線自由電子レーザー(XFEL)は、高強度かつフェムト秒パルスの軟X線を発振可能だ。さらに、この軟X線FELは、ミラーを使った集光により、他の光源より高強度な軟X線光電場を形成できる。しかし現状、そのビームサイズは数μm程度が限界で、軟X線利用実験の高度化のためには、ビームサイズのさらなる微小化が求められていた。

そこで、研究グループは、KBミラーと回転楕円ミラーという反対の特徴を持つ2種類の集光ミラーに着目。受光ビームサイズは大きいものの、集光サイズは数μmのKBミラーと、受光ビームサイズは小さいものの、1μm以下の微小集光ができる回転楕円ミラーを組み合わせることを考えた。そして、KBミラーで軟X線FELを受光し、集光してビームを小さくした後、回転楕円ミラーで再び集光する「ハイブリッド型集光システム」を考案した。

(上)回転楕円ミラーで軟X線FELを集光する様子(下)集光点における強度プロファイル

実際に、同集光システムを構築して集光実験を実施。波長10nm前後の軟X線を500×550nmの領域に集光し、1016W/cm2超の高強度な軟X線光電場を形成することに成功した。次に、この高強度な集光ビームを用いて、可飽和吸収と呼ばれる非線形光学現象も観測。窒化ケイ素の薄膜の透過率を計測した。その結果、高強度な軟X線電場形成の証拠となる、可飽和吸収を示す急激な透過率上昇を確認した。

窒化ケイ素に対する軟X線FELの透過率と集光強度の関係

研究グループによると、同集光システムの集光ビームの小ささから、微細構造分析への応用も可能だという。さらには、材料科学や非線形軟X線光学など、さまざまな分野への波及効果が期待できるとしている。

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