マイクロプラスチックを分解し、オメガ3脂肪酸に変換する微生物を特定

Photo: Marja Tiirola.

ユヴァスキュラ大学、ヘルシンキ大学などの共同研究チームが、腐植質(植物が微生物によって分解された最終生成物)の湖に由来する微生物が、マイクロプラスチックを分解して有益なオメガ3やオメガ6脂肪酸に変換していることを突き止めた。研究成果は2019年12月27日、『Scientific Reports』に掲載された。

近年、マイクロプラスチックによる淡水、海水の汚染は最大の環境問題の一つとなっている。今回研究チームは炭素同位体標識を用いて、ポリエチレンが食物連鎖の末にどのような運命を辿るのかを追跡した。ポリエチレンを13C同位体で標識し、安定同位体質量分析法を用いて、生成されたガスと微生物の脂肪酸を分析した。

その結果、腐植質の湖に由来する微生物は、化学的な分解に対して耐性があるマイクロプラスチックポリマーも分解していることが分かった。水のきれいな湖に生息する微生物よりも腐植質の湖の微生物のほうが、マイクロプラスチックの分解がより多く行われた。脂肪酸を特定することで、分解している細菌群を特定するのにも役立ったという。

そして驚くべきことに、マイクロプラスチック由来の炭素が、鞭毛真核生物種の必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6に取り込まれたことが示された。さらに、これらの必須脂肪酸が成長を支え、水生の食物連鎖の次のレベルである草食動物プランクトンの細胞膜へと組み込まれたことも確認された。

以前の研究では、高濃度のマイクロプラスチックが藻類や動物プランクトンの成長を阻害しうると示唆されていた。しかし今回の研究は、微生物がこの成長阻害を回避していることを示している。微生物がプラスチック表面を覆い、放出された化学物質を利用し、藻類や動物プランクトンとの物理的接触を防いでいた。微生物は水域環境でマイクロプラスチックの潜在的な毒性を止めうる可能性がある。

今回の研究は、水生微生物がポリエチレンマイクロプラスチックを直接利用して、栄養的に重要な生体分子を生成し、生化学的にアップグレードし、食物連鎖を通して栄養として伝達することを実証したといえるだろう。

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Microbes from humics lakes surprised – bacteria and algae produced omega-3 fatty acids from microplastics

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