【東京モーターショー2019】自動で空気が入るタイヤから空飛ぶタイヤまで――タイヤメーカーが提案する未来のタイヤとは

自動で空気圧を調整するタイヤ「Conti C.A.R.E.」

2019年10月24日~11月4日の日程で開催されていた「第46回東京モーターショー」。多くの自動車メーカーが、電動化や次世代モビリティを中心におく戦略を明らかにしている。「CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)」というキーワードで表現されるこの変革に、タイヤメーカーはどのように向き合おうとしているのだろうか。(執筆:後藤銀河)

コンチネンタル――自動で空気圧を調整するタイヤ、車両管理の容易化が狙い

コンチネンタルが提案するコンセプトタイヤ「Conti C.A.R.E.」には、大きく2つの特徴がある。1つは自動でタイヤの空気圧を調整すること。もう1つはタイヤの状態を遠隔管理できることだ。

タイヤが回る遠心力でシリンダー内のピストンが動いて空気を圧縮し、青色のエアタンクに貯める仕組みだ。

この空気圧を自動で調整する仕組みだが、特別なコンプレッサーを使うのではなく、タイヤの遠心力を使うところが興味深い。タイヤが回転することで、シリンダー内のピストンが遠心力で押され、空気を圧縮する。その空気はホイール内のエアタンクに一時的に貯蔵され、空気圧の調整時に利用されるというものだ。最近のIoTシステムなど、外部電源不要の「環境発電」で作動するデバイスが登場しているが、これは「環境コンプレッサー」だともいえる。

特に欧州車などでは、高速道路走行時や乗車人数の多少によって空気圧の指定を変えていることがあるし、路面温度が変われば空気圧も変化する。このシステムであれば、毎回エアを調整する必要がない。説明員によれば、社内テストでこのシステムが空気圧を確保できることが確認されているという。

Conti C.A.R.E.の特徴は、タイヤ表面に導電性のゴムを使い、外、中、内のブロック毎に状態検知ができ、得られたデータは外部へと通信することができる。C.A.R.Eは「Connected/Autonomous/Reliable/Electrified」の頭文字だ。

Conti C.A.R.E.のもう1つの特徴である、タイヤ状態の遠隔管理は、導電性を持たせたタイヤゴムと、タイヤに内蔵されたセンサーデバイスによって実現する。タイヤのパンクを検出する空気圧モニタリングだけであれば、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)によってすでに実用化(欧米では法規化)されている。Conti C.A.R.E.は、空気圧だけでなく、タイヤの摩耗状態も遠隔監視することが可能だ。

タイヤ側に設けられたセンサーデバイス。通常のTPMSのようにエアバルブ部ではなくタイヤ部に装着されるため、空気圧に加えて、タイヤの摩耗や表面温度などのデータがとれる。

このシステムは「ContiSense」と呼ばれ、タイヤ側は導電性ゴムとセンサーデバイスによって構成されている。タイヤのコンパウンドには導電性物質が含まれており、センサーデバイスからの電気パルスによって、タイヤの状態を検知できるという仕組みだ。タイヤが摩耗すれば、導電性物質が変化して電気伝導度が変わるため、摩耗状態が分かる。タイヤのブロックごとに検出できるため、内側だけ或いは外側だけといった偏摩耗の状態も分かる。また、釘が刺さった直後で空気が抜けていないような場合も、電気パルスによって検出できるという。

説明員によると、コンチネンタルの狙いは、数百台の車両管理が必要なフリートユーザーだという。確かに運行前始業点検で、タイヤの状態の確認は必須項目だ。毎朝数百台の保有車両の空気圧を手動で測定するのも大変な手間だろうし、それが自動で管理できれば大きなメリットがある。また、今後拡大するシェアードモビリティにとっても、タイヤの状態管理は有効なソリューションだと思われる。

グッドイヤー――未来のタイヤは空も飛べるし、苔テラリウムもできる

「Goodyear Aero」は、地上走行と空中飛行の両方に対応するというコンセプトタイヤ。

グッドイヤーのコンセプトタイヤ「Goodyear Aero(エアロ)」は、未来の空飛ぶ自動車のタイヤを描いている。空陸両用の「ツーインワンタイヤ」をコンセプトに、地上を走行するためのタイヤとしても、空を飛ぶためのプロペラとしても機能するというものだ。

東京五輪に向けて、空飛ぶ自動車の研究開発も進んでいる。映画「ブレードランナー」には「Police Spinner」と呼ばれる空飛ぶパトカーが登場するが、もう映画の中だけの話ではなくなる日も近いのかもしれない。

タイヤのサイドウォール内で苔を生息させるという「Goodyear Oxygene」。タイヤで苔テラリウムができる。

「Goodyear Oxygene (オキシジェン)」は、タイヤのサイドウォール内で苔を生息させるというもの。トレッド部が開口しているため、路面から水滴や水分を吸収して循環できる。苔は光合成によって、空気中に酸素を放出するというエコロジーなタイヤだ。

「ホイールの周りにゴムを巻いた構造は、100年前から基本的には変わっていない」とも言われるタイヤだが、タイヤメーカーもまた、変革を目指している。

ブリヂストン――EVや宇宙開発を支える国産技術

「走行中ワイヤレス給電対応タイヤ」

EVの普及促進のため、解決すべき課題のひとつに、充電の待ち時間がある。夜間の普通充電はよいとして、出先での急速充電は短ければ短いほうがよい。さらに、空中給油を受ける戦闘機のように、走りながら充電できれば理想的と言えるだろう。

ブリヂストンの「走行中ワイヤレス給電対応タイヤ」は、その名の通りに走りながら非接触で給電できる世界初のタイヤだ。EVのインホイールモータへの給電を想定したもので、東京大学大学院新領域創成科学研究科 藤本研究室が推進するプロジェクトだ。2025年に実証実験フェーズへの移行を目指しているという。

有人与圧ローバ用タイヤ。人の背丈ほどもある大径タイヤだが、月面特有の地表をグリップするための特殊なデザインだ。展示はビッグサイトではなく、MEGA WEBのFUTURE EXPO会場にある。

この「有人与圧ローバ」用タイヤは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが推進する国際宇宙探査ミッションで使われるタイヤだ。地球の道路とはまったく異なる月面を走破するために、タイヤも特殊なデザインが施されている。
同社によると、月面で接地体が果たすべき4つの役割があり、それは「重量を支える」「駆動力/制動力を伝える」「方向を転換/維持する」「路面変化に追従する」ことだという。
FUTURE EXPO会場では、機動戦士ガンダムの映像の前で、有人月面ローバの模型と共にこの巨大なタイヤを見ていると、日本が目指そうとする宇宙開発の姿を垣間見たような気がした。

関連リンク

東京モーターショー 2019


ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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