MIT、電力を使わず冷却するシステムを開発

Image courtesy of the researchers

米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、2019年10月30日、電力を使用しない冷却システムを開発したと発表した。研究成果は『Science Advances』誌に2019年10月30日付で掲載されている。

この冷却システムは日光を遮断して温度が上昇することを防ぎ、同時に熱として赤外線を効率的に大気に放射して、周囲の大気温度よりも低い温度にデバイスを冷やす放射冷却を利用している。デバイスには可動部品は無くローバストなデザインだ。炎天下でも13℃に冷やすことができる。

先行研究を基に、新しいデバイスでは表面を低温に保ちつつ冷却も効率よく行える断熱材の開発に注力したという。「熱損失を最小限にする方法の研究は盛んですが、熱利得を小さくする方法は注目されておらず、とても難しい課題です」とMIT機械工学部学部長であるEvely Wang教授は語る。

エアロゲルはそのほとんどが空気で構成された軽量な材料で、極めて高い断熱性を有するが、研究チームは新しい種類のエアロゲルの研究を進めた結果、ビニール袋に使用されているポリエチレンからエアロゲルを作り、柔らかく弾力性がある白い断熱材を完成させた。その見た目はマシュマロのようだという。微細な泡のような構造で、水の比重の50分の1という軽さとのことだ。

そして、注目すべき点は、その断熱材が太陽光の90%以上を遮蔽して表面温度が上昇しないようにする一方で、赤外線の約80%は外側へ放出させるという赤外線に対する透明度の高さだ。

その結果、金属やセラミックなどの材料から作られたエミッター(絶縁層)の下に置かれたプレートを劇的に冷却できるという。冷やされたプレートは、プレートに接続されている容器を冷却し、プレートと接触しているコイルを通過する液体を冷却する仕組みだ。

実証試験はチリのアタカマ砂漠で行われ、デバイスは正午の太陽光の下で13℃の冷却温度を達成したという。なお、MITのキャンパスで同様の試験を行ったところ、冷却温度は10℃以下を達成したようだ。

理論的には、このようなデバイスは温度を50℃下げることも可能だという。研究チームは、さらに研究を重ねていく予定で、電源不要のエアコンの開発などへの応用の可能性も視野に入れているという。

断熱材には真空システムがよく利用されているが、真空システムは効率的ではあるものの、重たく高価で壊れやすいという短所がある。エアロゲルを利用した冷却デバイスは低コストであることから、他の冷却システムを補完するような冷却力をもたらす低価格の追加機能として取り込まれることも期待できる。

「例えば、野菜や果物の腐敗を防ぐ方法としてエアロゲルを用いた冷却方法が応用できる。安定した電力提供が確保できないような遠隔地で、農産物を新鮮に長い時間保つことができるだろう」と研究チームのArny Leroy氏は語っている。

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