- 2019-12-6
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- LESSコーティング, liquid-entrenched smooth surface, Nature Sustainability, spotLESS Materials, クランフィールド大学, グラフト化, コーティング, ペンシルベニア州立大学, 水洗トイレ, 滑液表面
水洗トイレの洗浄水の使用量を大幅に削減する方法が開発された。この研究は、米ペンシルベニア州立大学が英クランフィールド大学と共同で行ったもので、成果は2019年11月18日に『Nature Sustainability』誌で発表された。
一般的な水洗トイレでは、およそ6リットルの洗浄水が使われている。毎日トイレを流すためだけに1140億リットル以上の水が使われている計算だが、その一方で、世界には水不足に苦しんでいる地域も多い。
研究チームは今回、トイレの自己洗浄能力を高める特殊コーティングを開発した。汚物やバクテリアをはじくこのコーティングは、LESS(liquid-entrenched smooth surface:滑液表面)コーティングと名付けられた2段階のスプレー式のものだ。
1番目のスプレーは、グラフト化(注:主鎖のポリマーに他のポリマーを枝状に接木し、機能性を付与するもの)されたポリマーから作られており、極めて滑らかな撥液性の土台を構築する。このスプレーは、乾燥すると、人間の髪の毛の約100万分の1の細さの、小さな毛のように見える分子を成長させる。
ここに2番目のスプレーを噴射することで、ナノスケールの「毛」の周りに潤滑剤の薄い層を注ぎ、非常に滑りやすい表面を作り出す。
このコーティングをしたトイレで試験したところ、便器内部には残留物の付着は見られず、わずかな洗浄水のみで排泄物を処理できることが分かった。また、潤滑剤層の再塗布が必要になるまで、約500回効果が持続すると予測されている。
研究チームによると、硬化に数時間かかる他のコーティングに比べ、LESSコーティングは5分未満で完了するという。さらに、細菌、特に感染症や不快な臭いを拡散させるものの付着を効果的に防ぐことも分かった。
これが広く採用されれば、貴重な水資源を他の重要な活動や、干ばつ地域または慢性的な水不足の地域に注ぐことができるだろう。また、この技術は世界中で普及しつつある無水トイレに使用できる。
このLESSコーティングは、ベンチャー企業「spotLESS Materials」によって、市場に投入されている。同社は、世界の水資源を持続させる役割を果たし、その技術の範囲を拡大し続けることを目指している。
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