京都大学は2019年12月16日、新物質の合成条件をAIで効率的に推薦するシステムを開発したと発表した。
AIを活用して新材料の発見などの効率化を目指すマテリアルズインフォマティクスは、近年量子力学による第一原理計算データベース構築およびそのデータに基づいて多くの未知物質などの予測が行われたことで、新たな局面を迎えているという。しかし、理論計算をもとに予測した物質や特性を実証するために必要な、実験結果を予測するためのデータベースが無い、という課題があった。
今回の研究では、4種類の合成方法に対して系統的に合成実験を行う並列合成実験システムを開発。これを使用し合計約1600種類の合成を行い、目的の物質ができたかどうかをX線回析装置で連続的に評価して点数化した。これにより、約1600件の合成成否に関するデータベースを構築した。
続いてこのデータベースを、探索対象となる約24万通りの全ての実験条件を表した合成条件テンソル(合成条件データの多次元配列)に入力。「おすすめ商品」などを提示するシステムに使用されている「低ランク性の仮定」のもとでテンソル分解することで、未実験の条件についての合成実験の成功可能性を予測し、スコアとして与える推薦システムを開発した。
京都大学によると、これまで理論計算主導で成果を上げてきたマテリアルズインフォマティクスは、今後実験データを活用した研究開発の効率化が重要になるという。そして、ロボットを用いた自動実験によるデータ収集や、AIによる解析、そして新たな実験計画のような流れで研究開発が加速していくことが期待できるという。また、今回開発した手法が適用できる材料の範囲も、今後広がることが期待されるという。