導電性高分子に熱起電力が生成するメカニズムを解明――より高効率の熱電変換素子の開発に期待 東京大学など

研究で用いたオンチップサーモメータの顕微鏡像(左)と、オンチップサーモメータ上の熱勾配の様子(右)

東京大学は2019年12月20日、導電性高分子に熱起電力が発生するメカニズムを解明したと発表した。

同研究は、産業技術総合研究所との共同研究拠点である産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリおよび物質・材料研究機構と共同で行われた。

プラスチックやゴムなどの有機高分子は、電気的絶縁体として広く活用される一方、導電性高分子としての応用の研究も進んでいる。その1つが熱電変換素子への応用研究だ。

金属や無機半導体では、固体物理学の標準理論によって電子伝導性と温度勾配によって生じる電圧(熱起電力)の発生機構を説明できた。しかし、導電性高分子は、高分子の鎖同士が複雑に絡まった複雑な構造を持つため同理論が成り立たない。このため、どのような物質設計によって電気伝導性や熱電変換性能が向上するのかなどが分からなかった。

今回の研究では、厚さ数十ナノメートル程度の薄膜試料の電気伝導度、キャリア数、ゼーベック係数を同時に計測できるオンチップサーモメーターデバイスを作製。これらの計測数値は、いずれも熱電変換効率を決定する材料物性値だ。

これを使い、熱電変換材料として期待されている高結晶性の導電性高分子薄膜を対象に、室温から25K程度の低温領域にかけて測定した結果、導電性高分子において、金属と同様の縮退した電子状態が発生していることが明らかになった。そしてこの電子状態が熱起電力を生成していることも解明した。縮退した電子状態とは、室温程度の金属中の自由電子で生じる電子の状態だ。

今後さらに結晶性を向上させた上で効率よく化学ドーピングを実施し、金属的な電子状態を制御することで、より高効率の熱電変換素子の開発が期待できるという。

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