脳は人工視覚と自然視覚の情報を統合できる――視力回復治療に新たな可能性

イスラエルのバル=イラン大学は、2019年12月31日、米スタンフォード大学と共同で、脳が人工網膜からの情報を処理し、人工網膜以外の他の部分から入ってくる自然視情報とを統合できる可能性、すなわち、人工視覚イメージと自然視覚イメージとを統合できる証拠をつかんだと発表した。研究論文は、学術雑誌『Current Biology』に2019年12月26日付で掲載されている。

この発見は、失明の最も一般的な原因の1つである加齢黄斑変性症(AMD)に苦しむ患者の視力をより良く回復する道を開く可能性があると研究論文の筆頭著者であるYossi Mandel教授は述べた。

AMDを発症すると、網膜の中心部である黄斑がダメージを受けて視力が低下するが、網膜周辺部の視力は正常であり、治療方法として人工網膜を移植する方法がある。人工網膜を移植されたAMD患者は、中心部の人工視覚と周辺部の自然視覚の組み合わせを持つことになる。

そこで、研究者たちは、脳が人工視覚と自然視覚の組み合わせをどのように処理するのか、そして人工視覚と自然視覚を適切に統合できるかどうかを調査した。

実験では、数十個の小さな太陽電池と電極から構成された組織をマウスの網膜下に移植して、マウスの脳の活動を観察。その結果、脳が視覚野の基本的な処理能力を保持しつつ、人工視覚信号と自然視覚信号を結合できることを示唆する証拠を発見したとしている。この実験結果は、人工視覚と自然視覚は脳内で統合されることが可能だという仮説を支持しているとMandel教授は述べた。

この研究成果は、人工網膜デバイスを移植したAMD患者の視力回復をサポートする治療開発に役立ち、さらには人工的なプロセスと自然なプロセスが共存する将来のブレインマシンインターフェース(BMI)への活用にも影響を及ぼす可能性があるだろう。

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