薄い氷が成長する様子を原子間力顕微鏡で明らかに――新しい着氷防止剤の開発へ

Image: Courtesy of Joseph Francisco

ペンシルベニア大学の研究チームは、北京大学らと協力して、氷が2次元に成長する過程を確認したと発表した。原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)の画像から、薄い氷のエッジ部分では、水分子が6角形または5角形に結合しているのが分かる。シミュレーションと実験の組み合わせから得られた知見は、着氷除去効果をもつ材料の開発につながると期待される。研究結果は、2020年1月1日付けの『Nature』に掲載されている。

大気化学者であるJoseph S. Francisco学長特別教授の研究室では近年、固体表面の界面における水、特に氷の振る舞いの研究に特に重点を置いてきた。氷が成長する基本的な原理を理解するために、水分子数個分の厚みしかない氷の層でできた2次元構造を研究している。

研究チームは北京大学と協力し、高出力のノンコンタクトAFMを使って、2次元構造の氷を可視化した。AFMを利用すれば、検査時の破壊を最小限に抑えつつナノスケールの観察ができる。氷の先端は「ジグザグ型」もしくは「アームチェア型」をしている。通常、自然界の氷はジグザグ型だ。しかし、Au(金)表面で成長する2次元の氷ではパターンが違った。アームチェア型の先端が安定化し、通常とは異なる経路に従って成長していることが分かった。また氷の結晶が六角形をしているように、ジグザグに成長するパターンは水分子の6員環しかないと思われていたが、シミュレーションとAFM像の結果から、5員環が存在する中間の段階があることが判明した。

「私が特に素晴らしいと思う点は、この研究がこれまで氷の成長方法とされていた考え方への挑戦だということだ」と、Francisco特別教授。氷の成長メカニズムと構造を学ぶことは、大気中のほかの水蒸気や化学物質と相互作用する場合など、より複雑なシナリオにおける氷の振る舞いを理解するのに役立つ。「構造を知ることは非常に重要です。低次元の水は自然界にあふれていて、材料科学や化学、生物学、大気科学といった幅広い科学分野で、とても大切な役割を果たしています」と、シミュレーションを担当したポスドクのChongqin Zhu氏も語る。

実用的な意味も大きい。例えば、風力タービンのブレードに着氷すると、所定の性能が発揮できなくなる可能性があるが、水と表面の相互作用を理解することで、着氷除去効果をもつ新材料の開発にもつながる。研究チームは今後、2次元から3次元へ研究を拡張していく予定だ。

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A close look at thin ice

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