植物などが太陽の光からエネルギーを作り出す光化学反応の仕組みを解き明かす

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米アルゴンヌ国立研究所(ANL)は、2020年2月4日、ワシントン大学と共同で、人工のタンパク質複合体内で、2つの光合成経路の内どちらか1つを選択して通過させることに成功したと発表した。この研究は、光合成タンパク質が捉えた光を利用して一連の電子伝達反応を開始する初期段階の超高速現象に注目したもので、植物などが太陽の光を利用してエネルギーを作り出す仕組みを解き明かす一歩になるという。研究成果は、『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に2019年12月31日付で掲載されている。

光合成生物は色素とタンパク質複合体を使用して、太陽光のエネルギーを必要なエネルギーに変換している。具体的には、光合成生物のタンパク質内に局在する色素で光子を吸収すると電子伝達反応が始まり、エネルギーの流れが発生するという。

光子は、電子を推進して細胞内の特別な区画に存在する膜を通り抜けさせる。膜を通り抜ける電子の分離とその電子の安定化が、細胞成長を促進するエネルギーを生み出すので重要なのだという。

1980年代に、光を吸収した後に電子伝達反応が起こること、そして電子が移動できる経路は2つあることが既に発見されていたが、植物、藻類、光合成細菌など、自然界では2つの経路の内1つしか利用されておらず、その理由は不明のままであった。当時分かっていたことは、膜を横断する電子を推進させる、つまり、光子エネルギーを効果的に取り入れるには複数のステップが必要であることだった。

今回、研究者らは、電子伝達反応の経路を人為的に変更させることに成功。使われていなかったもう1つの経路を有効にする一方で元の経路を無効化したという。自然界で、電子は100%の確率で1つの経路しか選択しなかったが、研究チームは90%の確率で電子がもう1つの経路を通過するように干渉できたとしている。

ANLの生物物理学者Philip Laible氏は「我々は、全く新しい光駆動生化学反応の一分野を開拓するという素晴らしい機会に恵まれています。自然界では想像されていなかった現象です」と語る。

この結果、研究者らは、意図する経路を電子が通過するような電子伝達システムを設計する可能性を見出している。エネルギーの流れを活用できるようになり、非生物システムの新たな適用につながる設計原理を理解することは、将来、太陽光発電デバイスの効率を大幅に向上させ、デバイス自体をかなり小さくすることも可能になるだろうと期待を寄せている。

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