超高圧下で粒子レベルの金属組織がより強固になることを発見

PHOTO CREDIT: Zhou et al.

米ユタ大学は、2020年2月24日、最小粒径3ナノメートルのニッケルを試料として用いた高圧下の実験で、粒径が小さくなるほど試料の強度が増加するという結果を得たと発表した。研究成果は、学術雑誌『Nature』において2020年2月24日付で発表されている。

細粒化による硬化と結晶粒径との関係はホールペッチ(Hall-Petch)の関係と呼ばれており、粒径10〜15ナノメートルまではホールペッチの関係は表現されているという。冶金学では強度が最も高くなるサイズの粒子、つまり最小有効粒径を見つけることが目標とされてきたが、臨界粒子径より小さくなると金属強度は弱くなることが研究者たちを悩ませていた。

粒径10ナノメートル未満で金属強度が弱くなることは、粒子表面の相互作用で説明されてきた。粒子の表面は内部とは異なる原子構造を有しているといい、摩擦力によって粒子が互いに結合している場合は金属強度が保たれるが、臨界粒子径未満では、互いに滑ってしまい強度が保てないと考えられてきたという。

しかし、そもそも技術的な限界により、直接、ナノ粒子の実験をすることがこれまではできておらず、ナノスケールの粒子がどう振る舞うのか限定的にしか把握できていなかったため、研究チームはナノ金属の強度を計測するという研究を計画したという。

研究者らは、最小3ナノメートルから幅広いナノ粒径で利用できるニッケルを実験試料に採用。ダイヤモンドアンビルセル(DAC)にさまざまな粒径の試料を置き、高圧力を印加。X線回折で各試料の状態を観察した。

実験では、ニッケルがその強度を取り戻すことができなくなるところまで高圧を加えて変形させたところ、粒子の強度は粒径が小さくなるほど増加した。粒径3ナノメートルの試料は、不可逆的に変形するまで4.2ギガパスカルもの圧力に耐えたという。これは、商用グレードの粒径のニッケルより10倍の強度だ。

研究者らは、粒径10ナノメートル未満でホールペッチの関係が成立しなくなったわけではなく、高圧を印加した条件下では粒子の相互作用状態が異なったためだと説明している。つまり、2つの粒子が高圧下で互いに押し付けられている場合、粒子間の摩擦が大きくなり互いに滑らなくなることで強度が保たれるようだ。

現時点での研究成果は高圧という条件下のため、工業用途には向かないが、圧力によって粒界変形を抑制する方法を見つけたことは金属強化における一助になるだろう。

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