離れた場所にある生体ニューロンと人工ニューロンを、インターネット経由で接続する研究

英サウサンプトン大学で、人工シナプスを使い、生体ニューロンと人工ニューロンをインターネット経由で接続する研究が行われている。イタリアやスイスの大学と共同で、インターネットを利用して行われた研究の詳細は、科学ジャーナル『Nature Scientific Reports』に2020年2月25日付で掲載されている。

この研究で、サウサンプトン大学は「メモリスター(memristor)」を使った人工シナプスを作成。イタリアのパドバ大学が研究室で培養したラットのニューロンと、スイスのチューリッヒ大学とスイス連邦工科大学チューリッヒ校がシリコンマイクロチップ上に形成した人工ニューロンとを、人工シナプスでつないでハイブリッドニューラルネットワークを構築した。

人工シナプスを構成するメモリスターは、通過した電流量を記憶する抵抗器(レジスター)だ。インダクター(コイル)、キャパシター(コンデンサー)、レジスターに続く第4の回路素子といわれている。

脳の活動は、ニューロンの発火をシナプスが伝達することで行われている。サウサンプトン大学の研究者たちは、イタリアにある生体ニューロンの発火事象をインターネット経由で受け取り、メモリスターで構成する人工シナプスに伝達。その応答は発火事象の形でスイスのチューリッヒにある人工ニューロンに送られた。このプロセスは同時に逆方向にも行えるので、生体/人工ニューロンは双方向にリアルタイムで情報伝達できることになる。

サウサンプトン大学のThemis Prodromakis教授は、この研究の意義について「この研究は、生体ニューロンと人工ニューロンがグローバルなネットワークを介してリンクされて通信するという自然の進化では起こり得なかった新しい状況を確立し、インターネットにつながるニューロエレクトロニクスの基盤を築くものだ。また、脳の機能不全部分をAIチップに置き換えるという人工神経技術に新しい展望をもたらすものでもある」と述べている。

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New study allows Brain and Artificial Neurons to link up over the web

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