超希薄燃焼と水噴射によるガソリンエンジン熱効率向上に成功 東京工業大学ら

東京工業大学は2020年4月24日、慶應義塾大学と共同で、超希薄燃焼と水噴射によってガソリンエンジンの熱効率を52%以上に向上させることに成功したと発表した。

超希薄燃焼ガソリンエンジンはその高い熱効率から期待されているが、さらなる熱効率向上には、高負荷領域におけるノッキング抑制と冷却損失低減が課題となっていた。従来から水の蒸発によって筒内ガス温度を低下させることでノッキング抑制および冷却損失低減を図る水噴射が研究されてきたが、これまでは主に超希薄燃焼ではなく理論空燃比を対象とするものだった。

従来の理論空燃比におけるガソリンエンジンの水噴射の多くは、吸気ポートから水を噴射する形式だった。しかしこの方法では、混合気へ均一に水が添加されるために燃焼速度が低下し、超希薄燃焼では燃焼が不安定になる恐れがあった。

今回の研究では、水を筒内に直接噴射し、点火プラグ近くを避けてピストン表面付近に水蒸気を集中的に分布させる「層状水蒸気遮熱」を採用した。これにより超希薄燃焼でも燃焼に悪影響を及ぼさずに、水の冷却効果が得られた。また、ピストン近くの未燃領域で多く発生するノッキングの抑制とピストン表面からの外部への冷却損失低減に成功した。

実機エンジン試験において、圧縮行程前半に水噴射することで安定した燃焼を保ちつつノックダウン抑制と冷却損失低減効果を確認。熱効率上昇も確認できた。これらに加えて、水噴射の可視化と熱流速の計測により、当初の狙い通りピストン表面近くに水蒸気層が形成されて低温となる温度成層化が起きていることが示唆された。

これらの結果を元に0.5Lクラスの単気筒エンジンで、水噴射および運転条件の最適化を実施。圧縮比17、空気過剰率1.9の条件で水噴射を行うことでグロス図示熱効率を最大52.6%にまで上昇させることに成功した。東京工業大学によると0.5Lクラスのガソリンエンジンでは世界最高水準の熱効率だという。

同大学では今後、水蒸気分布と熱流束の同時計測などによる熱効率向上の機構の解明を進める。また、水噴射インジェクタの形状や設置位置などの最適化によってさらなる熱効率向上が期待されるという。

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