外部電源不要で温度調整する繊維を開発――暑いときは冷たく、寒いときは温かく

華中科技大学は、外部電源なしで、肌を温めたり冷やしたりする、丈夫で快適な繊維を開発した。この研究は2020年3月27日、『ACS Applied Materials & Interfaces』に掲載された。

これまでにも、変化する気象条件に合わせ、気温が高いときは涼しく、寒くなると暖かいという衣類が研究されている。だが、こうしたスマート衣類では、1つの生地に2つの機能性を持たせることができない。そのため電子デバイスを用いることになるが、厚手で重く、壊れる可能性もあり、また高価になるという欠点がある。加えて、外部電源も必要になる。

そこで研究チームは、こうした欠点を克服できる、実用的な布地を開発することを目指した。

まず、絹とキトサン(甲殻類の硬い外骨格から得られる材料)を凍結紡糸(freeze-spun)法により、多孔性の微細構造を持つ繊維にした。そして、熱エネルギーを吸収/放出できる相変化ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)で細孔を埋め、液状のPEGが漏れ出さないように、その糸をポリジメチルシロキサンでコーティングした。こうして作られた繊維は、強く、柔軟で、撥水性を備えていた。

Credit: ACS Applied Materials & Interfaces 2020, DOI: 10.1021/acsami.0c02300

研究チームは、この繊維をポリエステル製の手袋にパッチとして織り込み、テストをしたところ、高温の空間(122F/50℃)に手を置くと、固体のPEGが溶融して環境からの熱を吸収し、低温の空間(50F/10℃)に移動させると、PEGが熱を放出して凝固することを確認した。

この生地を作るためのプロセスは既存の繊維産業と互換性があり、大量生産にスケールアップすることができるという。このような生地を使った衣類が普及すれば、冷房や暖房に必要なエネルギーを減らす可能性もある。

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