大気中から水を生成する機能を備えた冷却装置を開発――外部エネルギー源不要で太陽電池パネルの出力向上に寄与

© 2020 KAUST; Youssef A. Khalil

高温気候下で、空気中の水分を利用して太陽電池の効率を上げる水分採取装置がサウジアラビアで開発された。

商用のシリコン太陽電池パネルは、温度が上がると発電効率が下がり、一般に、1℃上昇すると出力(日射を電力に変換できる能力)が0.5%程度低下するといわれている。強い太陽光にさらされてパネルの表面が高温になればなるほど出力は大きく低下するため、冷房空調技術などを使ってパネルを冷やす努力が行われてきたが、効率を上げて得られるエネルギーよりも冷却に消費されるエネルギーのほうが多くなる傾向にあるという。

これに対し、サウジアラビアのアブドラ国王科学技術大学(KAUST)が開発した冷却システムは、外部のエネルギー源を必要としない。KAUSTの冷却システムは、強力な乾燥剤である塩化カルシウムを含むポリマーに、熱を吸収するカーボンナノチューブを加えたジェル状の水分採取装置だ。

このジェルは、空気が湿っているときには水分を吸収して2倍の重さまで膨脹し、太陽光エネルギーで水分を放出する。人工太陽光による実験では、許容量限界まで水を含んだジェルはパネルの温度を10℃下げるのに十分な水を放出することができた。

研究者たちは、夏と冬どちらでも、このジェルが夜間に空気中から水分を吸収し、日中に温度が上昇すると液体を放出することを観測した。KAUSTによれば、ソーラーパネルの効率は13~19%改善したという。

研究成果は、オンラインジャーナル『Nature Sustainability』に2020年5月11日付で発表されている。研究グループのRenyuan Li博士研究員によれば、この研究は大気からの水生成が気候変動との闘いにも有効に使えることを示しているという。

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