オンラインで働く従業員の管理にAIが活躍――アルゴリズムによるマネジメントを有効活用するには

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新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の中、企業が人々を守りつつ事業を継続するために、テレワークをはじめとする新しい働き方が広がった。この流れは、新型コロナウイルス感染拡大が収束した後も続く可能性がある。南カリフォルニア大学と富士通の研究チームは、クラウドソーシングプラットフォーム「Amazon Mechanical Turk」のデータを利用して、クラウドワーカーや従業員のモチベーションを高めるサポートツールとしてのAIについて検討した。

「失業率の上昇が続くと、営業停止時の一時的な対策や新型コロナウイルスの影響による経済活動の変化のために、クラウドワークの人気は高まるだろう。クラウドワークをより効率的なものにするために、AIを使った新しい監理支援策が必要となる」と南カリフォルニア大学のGale Lucas特任助教は語る。

AI技術は絶え間なく進歩しており、従業員や単発で仕事を請け負うギグワーカーの採用や評価、報酬設定などを支援するツールとして、AIを使ったアルゴリズムによるマネジメントが増えると見込まれている。多くのオンラインワーカーを抱える貨物輸送会社のUPS、配車サービスのUber、Amazonといった企業において、既にアルゴリズムによるマネジメントは重要な役割を果たしている。

アルゴリズムによるマネジメントの効果を調べるために、研究チームは、オンライン実験(データ数560)を実施し、自主性の認識と仕事の意義がクラウドワーカーのモチベーションにどのように影響するかを調べた。インターネット経由で必要なときにドライバーに配車を依頼するUberのように、クラウドワークは案件ごとに仕事が発注されるが、データ検証や機械学習、コンテンツの管理といったオンラインタスクが中心だ。

その結果、仕事に意味があり、アルゴリズムによるマネジメントがワーカーの自主性を強調するように組み立てられている場合は、ワーカーのモチベーションが上がることが分かった。逆に、仕事に何の意味もない場合は、ワーカーの管理統制を重視してアルゴリズムによるマネジメントが組み立てられた場合のみ、生産性が向上することが分かった。ただし、仕事の意味を明確にするというアプローチは、結果に系統的バイアスが生じてしまう可能性があることも研究者らは指摘している。

「ヒューマンエージェントインタラクション(HAI)を通じてユーザーのモチベーションと能力を高めることは、アルゴリズムによるマネジメントだけでなく、教育、ヘルスケア、コンピューターゲーム、生産性モニタリングといった他のAI分野にとっても重要な課題だ」と、研究チームは語る。

調査結果は、ニュージーランドで開催された自律エージェントとマルチエージェントシステムに関する国際会議「AAMAS 2020」で2020年5月11日に発表された。

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