MIT、EVが電力網へ電力供給する「V2G」の効果を検証

Credits:Image: Ehsan Faridi and Ehsan Keshavarzi/Inmywork Studio

EVが普及するにつれ、増加する車載バッテリーが電力網における費用対効果の高い大規模なエネルギー源として機能するようになるとする論文が発表された。この研究はマサチューセッツ工科大学によるもので、2022年10月18日付で『Energy Advances』に掲載された。

ゼロエミッションのEVが普及しつつあるが、それに伴いエネルギー(電力)需要も増加することになる。そこで課題となるのが、車両の充電に必要な電力の確保と、その電力を再生可能な資源から賄うことだ。ところが太陽光や風力は断続的なエネルギー源ではあるが、例えばリチウムイオン電池を使った定置型蓄電設備や、天然ガスあるいは水素を燃料とする発電所などのバックアップがなければ、クリーンエネルギーの目標は達成しがたい。こうしたエネルギーインフラの建設には、数千億円の費用がかかるとされる。

そこで注目されるのが「vehicle-to-grid(V2G)」だ。V2Gとは、充電器に接続されたEVの充放電タイミングを調整し、商用電力網の負荷のピーク時に、EVが電力網に電力を供給する技術だ。

今回の研究は、脱炭素に向けたV2Gの長期的な価値についての新たな見解を示すもので、定置型蓄電設備や他の発電機を大規模に置き換える V2Gの可能性を評価した。二酸化炭素排出目標、不安定な再生可能エネルギー(VRE)発電、エネルギー貯蔵/生産/送電インフラの構築コストなどの要素を統合した計算モデルを使い、将来の電力システムを包括的かつシステムベースで分析した初めての研究となる。

ケーススタディとして、厳しい炭素規制を満たすニューイングランドの電力システムを取り上げた。その結果、例えばこの地域にある800万台のEVのうち、13.9%が参加することで、14.7GW(ギガワット)の定置型蓄電設備が置き換えられることが分かった。これに相当する蓄電設備を建設するのにかかるコスト7億ドル(約923億円)が節約できるという。この試算ではEVの参加率が5%から80%の間で、V2Gによるシステム全体の節約額は1億8300万ドルから13億2600万ドル(約241億円から約1748億円)となった。

研究チームは、将来的には、EVが「車輪のついたエネルギー貯蓄装置」の役割を果たす可能性があるとしている。 

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