分子の明暗で情報を記録する「分子スイッチ 」を発見――記憶密度はHDDの100倍

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イギリスのランカスター大学の研究チームは、現在のハードディスクドライブ(HDD)の100倍の容量が期待できる「分子スイッチ」を発見した。常温常圧でトランジスタのように動作し、コンピューターの実用的な記録媒体としてバイナリ情報を保存できる可能性がある。研究結果は2020年5月11日、『Angewandte Chemie』に掲載された。

研究チームが発見した有機塩の分子は、走査トンネル顕微鏡を使って微小なバイアス電圧を制御することで、個々の分子を明るくまたは暗く見えるように切り替えられる。つまり、この明暗がバイナリ情報となる。特に室温と通常気圧で、書き込み、読み込み、消去が可能だという点で、これまで真空と極低温を必要としていた研究と異なっている。

分子の明暗は、バイアス電圧の状態を変えたときに、有機塩中のカチオンやアニオンの積み重なり方が変化することで生じる。明暗のスイッチングとは別に、分子が自律的に集まるプロセス、いわゆる自己集合も重要だという。研究チームは、自己集合を利用して高度に秩序化した2次元結晶構造にする方法を発見した。現在のエレクトロニクスのように高価なツールを製造する必要がないのも利点だ。

分子の大きさは約5nm2。実験によると、1平方インチ当たり最大256テラビットの記録密度で書き込み可能だ。書き込んだ情報は室温で読み出しする間も安定しており、適切なトンネル状態を選択すれば、意のままに即座に消去できる。

研究チームを率いるStijn Mertens氏は、「分子が分子メモリとして有効になるために必要な特性が全部そろっている。周囲条件下で両方向にスイッチング可能なことのほかに、明または暗の状態で長時間安定していることや、自己集合してわずか1分子の厚さの層を形成することも必要だ。今回の発見は、これら全ての特性を同じ分子に組み合わせた初めての例だ」と語る。

研究チームは、今回発見した分子が実際のHDDに使えるとは考えていないが、重要な概念実証になったとしている。「化学は数多くの洗練された機能と原子レベルの精度を持つ分子を作ることができるので、分子エレクトロニクスには非常に明るい将来があるかもしれない」とStijn Mertens氏は、その可能性を語る。

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