- 2020-7-1
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- 2重格子フォトニック結晶, LiDAR(Light Detection and Ranging), フォトニック結晶レーザー, 京都大学, 光測距システム, 北陽電機, 研究
京都大学は2020年6月30日、同大学工学研究科の研究グループが北陽電機と共同で、フォトニック結晶レーザーを搭載した光測距システム(LiDAR)を開発したと発表した。同発表によると、世界初の成果だという。
同研究グループは、2018年に半導体レーザーの高輝度化が可能な独自の「2重格子フォトニック結晶(2つのフォトニック結晶格子をxおよびy方向に約4分の1の波長分ずらして重ねたフォトニック結晶構造)」を発表しており、今回LiDARへのフォトニック結晶レーザーの搭載を可能とすべく、新たな2重格子フォトニック結晶構造を考案、作製した。
また高効率化と安定性を目的として、フォトニック結晶の上下に出射した光のうち、下方向へ出射した光を上方向へと反射させられる下部反射構造を導入した。
これらにより、直径500µmの発振面積のデバイスでビーム拡がり角が~0.1°となり、従来の2倍のスロープ効率~0.8W/Aでピーク光出力10W以上(パルス動作)が得られるようになった。
このような特性を有するフォトニック結晶レーザーを用いることで、レンズ無しでもビームが拡がらず、30m離れた箇所でも対称の取れた円形で~5cmという狭いビームスポットが得られた。
従来のブロードエリア半導体レーザーを用いたLiDARは、複雑なレンズ系を組み合わせて用いる必要があり、ビームの形状にも乱れが生じる。このため、ビームを走査した時にスポットに重なりが生じ、分解能が低下する。一方で、今回開発されたフォトニック結晶レーザーを搭載したLiDARは、レンズ無しで用いることができるほか、高い空間分解能を有する。
今回フォトニック結晶レーザーから出射されたビームは、機械式ミラーにより走査された。同研究グループは今後、電気的に2次元ビーム走査可能なフォトニック結晶レーザーの開発を進める。ビーム走査機能を搭載することで、非機械式のLiDARの開発に繋がることが期待される。