トヨタ自動車は2020年6月30日、スタンプを押すように、めっき処理を要する部位のみにめっき処理を施す技術を開発したと発表した。金属イオンを通す高分子膜(固体電解質膜)を用いるもので、同社によると世界初だという。
同技術を搭載した「スタンプ式めっき処理装置」は、同社の自動車生産関連の取引先で用いられるほか、ミカドテクノスおよび兼松の協力により2020年7月1日に販売が開始される。
今回開発された装置は、装置先端のヘッド上部から溶液を投入する仕組みとなっており、めっき処理をする部位に圧着するヘッド先端には金属イオンを通す固体電解質膜が装着されている。基板上のめっき処理を要する部位のみに固体電解質膜を圧着して電気を流し、めっき処理を施すことが可能となっている。
従来のめっき処理工程は、金属のめっき溶液が入った水槽に基板を丸ごと漬けなければならず、大量のめっき溶液が使用されることに加えて、めっき処理後には大量の溶液を廃棄する必要がある。また、めっき処理前後の洗浄工程を含めて複数の水槽が必要となる。一方で、今回開発されたスタンプ式めっき処理装置は、廃液の排出量を約30分の1に、CO2を約3分の1に削減することが可能となった。なお、冒頭の写真は、左右に2基設置した状態のスタンプ式めっき処理装置で、1基の大きさは約1×1×2ⅿである。
同装置は、トヨタ自動車より特許およびノウハウの供与を受けたミカドテクノスが製造し、兼松が販売する。今後2~3年は複数の企業に実証、評価用として納入し、2023~2024年頃には実用可能な装置として広く一般向けに普及させる計画となっている。