海の中からインターネットアクセス――光を使った水中ワイヤレスシステム「Aqua-Fi」

2020 KAUST; Xavier Pita

サウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学(KAUST)は、データ送信ができる水中ワイヤレスシステム「Aqua-Fi」を開発した。ダイバーが海中からLEDやレーザーによる光ビームを介して、マルチメディア通信することが可能になるシステムで、2020年6月9日、『IEEE Communications Magazine』に掲載されている。

学術的にも産業的にも水中環境を詳細に監視、調査したいというニーズは多いが、水中からインターネットに接続するのは容易ではない。水中で通信を行う手法としては、無線や音響、可視光などによって実現可能だが、無線は到達距離が短く、音響はデータレートが遅く、可視光は送信機から受信機へと妨げられることのない経路が必要になる。

今回開発されたAqua-Fiのプロトタイプは、緑色のLEDまたは520nmのレーザー光を使用してデータを送信するものだ。LEDが近距離通信用の低エネルギーオプションで、より多くの電力を消費するレーザーを使って遠距離へとデータを伝送する。

研究チームは、静水中で数m離れた2台のコンピューターを使い、マルチメディアデータを同時にアップロードおよびダウンロードするテストを実施した。最大データ転送速度は毎秒2.11メガバイト、平均遅延は往復で1.00ミリ秒だった。

実際のアプリケーションでは、ダイバーのスマートフォンから水中装備に装着されたゲートウェイデバイスにデータを無線送信し、ゲートウェイが水面上のコンピューターに光ビームを介してデータを送信、そこから衛星回線を使ってインターネットに接続することになる。

研究チームはAqua-Fiの実用化に向け、より高速な電子部品を用いてリンク品質と伝送範囲を改善することを考えている。また、動きのある水中で光ビームをレシーバーと完全に位置合わせするため、入射角度の広い球形レシーバーの採用を検討している。

関連リンク

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る