東北大学は2020年8月20日、温度依存性がほぼなく、極低温から200℃まで超弾性が発現する鉄系超弾性合金の開発に成功したと発表した。
超弾性合金は、超弾性が発現する温度範囲が狭いという欠点がある。ニッケル-チタン合金では、材料組成を変化させても実用的に超弾性を利用できる温度範囲は、おおよそ-20℃~100℃に限られているという。
一方、開発した鉄系超弾性合金は、主成分が鉄で、マンガン、アルミニウム、ニッケル、クロムを含む合金となる。その強度(応力)は、温度が変化してもほとんど変化がない。
応力変動が50MPa以下に収まる温度範囲は、ニッケル-チタン実用合金の場合、室温近傍の約8℃の範囲に限られる。しかし、開発した鉄系超弾性合金の場合は、極低温から約400℃にわたり、月や火星での温度範囲もカバーするという。
研究グループは、極低温から200℃までの広い温度範囲で超弾性を発現する合金は、今回の材料が世界初となるとしている。
多くの温度変化に曝される環境で、強度の温度依存性の小ささは大きなメリットだ。しかも開発された超弾性合金は、安価な原料で構成されるため、大型部材として利用できる可能性がある。
研究グループは今後、大型部材化と超弾性の性能評価を実施し、超弾性合金を用いた建築や、土木制震構造システムの開発を目指す。研究グループによると、開発した鉄系超弾性合金は、激しい温度変化に曝される月や火星などでの利用が考えられるという。