日本触媒は2020年10月5日、理化学研究所と共同で、バイオマス由来の難重合性モノマーを効率的に高分子量化できる重合システムを開発したと発表した。
バイオマス資源からは、不飽和炭素-炭素二重結合を有する脂肪族化合物や芳香族化合物が数多く得られる。その中にはケイ皮酸モノマーやクロトン酸モノマーが含まれ、これらを重合して得られるポリマーは、モノマー単位当たりの2つの光学中心を持ち、高度に立体規則性を制御することができることから高性能で高い機能を持つ新規樹脂素材の創出が期待されるという。これらはβ置換アクリレートに分類されるが、β位置換基の立体的、電子的要因によって通常のラジカル重合法では高分子量化が困難なことが知られている。
今回の開発では、β置換アクリレートの重合に対して、モノマーを活性化させることで重合を進める有機酸触媒を用いたグループトランスファー重合(GTP)技術が適用できることを発見。同技術の開発を進めると共に重合メカニズムの解明によって、高分子量化の阻害要因を特定することで重合を効率化する方法を見出した。さらに、使用する有機酸触媒や開始剤の置換基構造などの重合条件を最適化することで、温和な条件下で効率的に高分子量化できる重合技術を開発した。
今回の開発した技術によって得られたケイ皮酸系ポリマーは、ポリカーボネートと同等かそれ以上の耐熱性を持ち、多くの薬剤への耐薬品性も示している。同じくクロトン酸系ポリマーは、有機ガラスとして知られるポリメチルメタクリレート(PMMA)に相当する透明性を持ち、同時により高い耐熱性および耐薬品性を示している。これらの特性は、高度に制御された立体規則性によって発現する液晶性によるものと考えられるという。