ナノ流体を用いた高効率の石油回収技術を開発――粘度の高い重質油も回収できる

ヒューストン大学の研究者チームは、安価で毒性のないナノ流体を用いて、貯留層から粘度の高い重質油でも効率的に回収できる方法を実証した。家庭用ミキサーを用いて市販のナトリウムから作製したナノ流体は、40万cP(センチポアズ)以上の高い粘度を持つ超重質油を、室温で80%以上回収した。研究成果は、『Materials Today Physics』誌に2020年9月10日付で公開されている。

従来原油として使用されている中軽質油の枯渇が懸念される一方で、世界の石油埋蔵量の約70%を占めるといわれている重質油は魅力的な資源だ。しかし現在の抽出技術では、低効率、高コスト、環境へ影響という問題がある。

今回開発した石油回収技術は、ナノ流体の化学反応によって発生する、熱、水酸化ナトリウム、水素ガスという3つの効果で、高い回収能を示す。

ナトリウムのナノ粒子が貯留層の水と反応して発生する熱は、石油回収で用いられている水蒸気攻法や他の熱を利用する技術と似た働きをする。またナノ流体は、アルカリ攻法で一般的に使用されている水酸化ナトリウムを生成する反応を引き起こす。さらに、石油回収技術の一つであるガス攻法で利用する水素ガスも発生する。ナトリウムのナノ粒子は反応後に消散するため、環境へのダメージを心配しなくて良い。

ナトリウムは水との反応性が非常に高く原油増進回収へ利用できると考えられていたが、反応性が高いがゆえに、すぐに反応してしまうという課題があった。そこで研究チームは、ナトリウムナノ粒子をシリコンオイル中に分散し、ナトリウムが水と反応する前に貯留層全体に広がるようにした。ナトリウムナノ粒子は、ペンタンや灯油など他の溶剤に分散することもできる。また、ポリマーや界面活性剤と混合して、より高い回収率を得ることも可能だ。

ただし今回の実証実験は実験室で行われたものであり、研究チームは、実際の油田での回収率は、実験室で得られた80%よりは少なくなるだろうとしている。

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