多機能性強磁性合金のハーフメタル電子状態の直接観測に世界で初めて成功――スピントロニクスデバイス開発に指針 広島大学ら

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広島大学の研究グループは2020年11月20日、高輝度光科学研究センターおよび東北大学と共同で、角度分解光電子分光(ARPES)法を用いて、多機能性強磁性材料として知られるCo2MnGeホイスラー合金の3次元的なバンド構造の観測に成功し、理論的に予測されていたハーフメタル性を示すバンド構造を世界で初めて実験的に明らかにしたと発表した。ARPES実験には、大型放射光施設SPring-8の軟X線固体分光ビームライン(BL25SU)にて高輝度シンクロトロン放射光を利用した。

超スマート社会 Soceity5.0の実現のためには、爆発的に増加するデータの処理やIoT(モノのインターネット)機器の増加、あるいは人工知能によって消費される電力を桁違いに低減する技術が必要となり、電子のスピンを利用して情報を記録/伝達する次世代のスピントロニクスデバイスが注目されている。電子のスピンを利用することで、外部電源が不要な省電力メモリやさらなる高密度/高性能化が期待される。

電子のスピンを制御するためには、例えば上向きスピンを持った電子は通し、下向きスピンを持った電子は通さないといった、スピン選択的な電気伝導性を示す材料が必要である。Co2MnGeのに代表されるホイスラー合金は、1990年代から理論的にハーフメタルな電子構造を持つことが予言されており、Co2MnGeのを用いたスピントロニクスデバイスの開発も行われてきた。しかし、未だ実用化には至っておらず、そもそもの電気伝導性の起源である電子のバンド構造の直接観測が求められていた。

電子のバンド構造を観測する強力な手法として、ARPES法が知られているが、高い規則度と原子レベルで平坦な清浄表面が必要となる。ホイスラー合金のように3次元的な結晶構造を持ち、元素置換の起こりやすい合金系でのバンド構造の観測は困難で、長らく研究されているにも関わらずそのハーフメタル性の起源となるバンド構造を実験的に確かめられてはいない。

研究者らは、高品質な単結晶試料を超高真空中で破断し、非常に絞られた放射光を用いて 10µm程度の大きさの平坦表面を狙って測定するという手法を用い、Co2MnGeのホイスラー合金の3次元的なバンド構造を世界で初めて観測。さらに、観測されたバンド構造は理論計算結果とよく対応し、Co2MnGeがハーフメタルなバンド構造をもつことを明らかにした。

金属/絶縁体/ハーフメタル強磁性体の典型的なバンド構造(●が電子を表し、○は電子の埋まっていない状態を表す)

これまで、ARPES測定に用いられてきた光のスポットサイズは0.1~1mm程度で、平坦性の悪い3次元材料や合金系のバンド構造を運動量に分解して観測することは困難だと考えられてきたが、10µm程度の絞られた光を用いれば、これまで観測困難だったホイスラー合金のバンド構造の観測が可能となり、さらなる ARPES 研究の進展が期待される。

今後は、高度な理論計算によって大量の元素の組み合わせから求める物性が得られる候補物質を探索する研究がより進められるだろう。Co2MnGeのホイスラー合金のバンド構造を実際に観測し、理論計算結果とよい一致を示したことは、このようなシミュレーションによる物質探索の手がかりとなると期待される。

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