MIT、携帯電話とAIで新型コロナウイルス感染を特定する手法を開発――無症状でも咳の音で分かる

MITの研究チームは、携帯電話とAIを使った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のスクリーニングツールを開発した。COVID-19感染者の中には、熱などの症状が出ない無症状の人々がいるが、このツールを使えば、咳をしたときの音からCOVID-19に感染しているかどうかをAIが判定してくれる。研究結果は、2020年9月30日付けの『Engineering in Medicine and Biology』に掲載されている。

COVID-19の無症状感染者は、自身でも感染に気付いていないため、知らず知らずのうちに周囲に感染を広げている可能性がある。しかし、明らかな症状が無くても、身体には何かしらの変化が起こっているようだ。研究チームは、健康な人とCOVID-19に感染した人では、咳の音が違うことを発見した。その違いは、人間の耳では判別できないが、3種類のAIモデルを組み合わせることで検出が可能になった。

研究チームは感染の有無を判断するバイオマーカーとして、声帯の強さ、感情、肺や呼吸器の機能に着目し、3つの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に対して、単語やスピーチ、咳の音声データセットを使ってそれぞれの項目を訓練した。バイオマーカーに感情が含まれているのは、もともと研究チームがアルツハイマーの兆候を検出する研究をしていたためで、アルツハイマーの患者は頻繁に不満を訴えたり、感情の表現が乏しくなったりすることが関連している。3つのモデルに4つ目のバイオマーカーとして筋肉の劣化を検出するアルゴリズムを組み合わせ、COVID-19の診断システムを作製した。

研究チームは、約4000件のデータを使ってAIモデルを訓練し、約1000件のデータを使ってCOVID-19に感染した人と健康な人の識別テストを行った。咳のデータは、携帯電話やPCのWebブラウザを通じて収集した音源を使用しており、COVID-19感染者のデータも含まれている。テストの結果、98.5%の感度で感染者を検出し、そのうち無症状患者については100%を検出できた。

この診断ツールでCOVID-19の確定診断はできないが、早い段階で感染の疑いに気づくことで、正確な検査を受けるきっかけとなるだろう。研究チームは企業とも協力して、無料の診断アプリを開発している。もしFDA(米国食品医薬品局)が承認し、多くの端末にインストールされれば、簡単で非侵襲的なプレスクリーニングツールとして利用できる。「この診断ツールが効果的に導入され、人々が学校、工場、レストランに行く前に使われるようになれば、パンデミックの拡大を抑えることができるだろう」と、共同著者のBrian Subirana研究員は期待を寄せている。

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Artificial intelligence model detects asymptomatic Covid-19 infections through cellphone-recorded coughs

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