- 2020-12-27
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- Alexander Friedman, Cell, MIT, ストリオソーム, モチベーション, 大脳基底核, 接近回避型葛藤, 脳回路
「いくつになっても新しいことに挑戦できる」とはいうものの、年齢を重ねるごとにハードルが上がる、モチベーションを維持するのが難しい、と感じる人も多いだろう。その理由が、特定の脳回路にあることをMITの研究チームが発見した。マウスを使った実験では、年を取っていてもその回路を刺激すると学習意欲が起こり、逆に抑圧すると学習意欲が低下することを確認している。
「生き残るため、何かをするためには、我々は常に学べる状態でなくてはならない。自分にとって何が良いことで、何が悪いことか学ぶ必要があるのだ」と、筆頭著者のAlexander Friedman氏は語る。
Friedman氏をはじめとするMITの研究チームは、脳の中の「ストリオソーム」と呼ばれる細胞の集まり、神経回路の活動が、学習意欲に関わることを発見した。ストリオソームは、運動調節、認知機能、感情、動機づけに関わる大脳基底核の構成要素のひとつ、線条体内部に散らばっている。ストリオソームは脳の深い部分にあって非常に小さいため、可視化が難しく、長い間その役割は謎とされていた。
研究チームはこれまでに、ストリオソームが接近回避型葛藤と呼ばれる一種の意思決定において重要な役割を果たしていることや、大脳基底核の構成要素のひとつでドーパミンを放出する黒質と関係があること、慢性的なストレスの影響を受けることを発表している。
今回、研究チームはマウスを使った実験で、2種類の音を聞いた後の行動の結果が「おいしい餌」または「不快な刺激」になるように設定し、行動学習時のストリオソームの活性状況を分析した。この種の学習には「コスト」と「報酬」の評価が必要になる。学習しているときのストリオソームは活性化し、2つの音に対するマウスの反応とも相関があることを確認した。一方、高齢のマウスは、コストと報酬分析が必要な学習への取り組みが低下し、ストリオソームの活性も若いマウスより低下していた。
しかし、高齢のマウスに遺伝子標的薬を投与し、ストリオソームを活性化させたところ、学習に取り組むようになったことが分かった。研究チームは現在、加齢だけでなくメンタルヘルスによる疾患を抱える患者に対して、この脳回路を刺激する薬物治療に取り組んでいる。この研究結果は、2020年10月27日付けの『Cell』に掲載されている。
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Study helps explain why motivation to learn declines with age