- 2023-4-13
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- MIT, RFIDタグ, USENIX Symposium on Networked Systems Design and Implementation, X-AR, アンテナアレイ, コンピュータビジョン, テーパー形状, ホログラフィック可視化機能, 合成開口レーダー(SAR), 学術, 拡張現実(AR), 電子商取引(eコマース)
マサチューセッツ工科大学(MIT)は、透視能力のような機能を持った拡張現実(AR)ヘッドセット「X-AR」を発表した。X-ARは、2023年4月17日〜19日にアメリカで開催される「USENIX Symposium on Networked Systems Design and Implementation」に出展予定だ。
X-ARは、コンピュータビジョンとRFIDタグの技術を組み合わせて、倉庫内に積まれた箱の中から特定のアイテムを捜し出し、作業者にその所在を知らせることができる。このRFIDタグの電波は、段ボールやプラスチック製の箱を透過する周波数帯を使用することで、アイテムを特定できる。
X-AR本体の特徴は、RFIDタグと通信するアンテナだ。RFIDを使った位置測定システムの多くは複数のアンテナを必要とするが、このヘッドセットには、十分に広い帯域幅を持つ「単一」の軽量アンテナ素子が必要とされた。
アンテナは、ヘッドセットのカメラを覆ったり使用者の動作を妨げたりしない位置に取り付ける必要がある。そこで研究チームは、構造が簡単で軽量なループアンテナを採用した。また、帯域幅を広げるためにアンテナの一部を徐々に細くする「テーパー形状」にしたり、ギャップを追加したりした。
RFIDタグの位置を特定する技術には、「合成開口レーダー(SAR)」を採用した。X-ARは、ユーザーが屋内移動する際に、複数の位置で対象物を計測し、その計測値を合成して位置を特定する。この機能は、複数の素子を持つ「アンテナアレイ」に相当する役割を果たす。
一方、ユーザーに対しては、「ホログラフィック可視化機能」によって、アイテムの位置情報を見せている。アイテムの位置に向かって部屋を歩く着用者を誘導する際、そのアイテムはARインターフェースのなかで透明な球体として表示される。また、アイテムまでの道筋は床の上の軌跡という形で映し出される。
ユーザーが手にとったアイテムが目的の個体かを確認するために、X-ARはRFIDタグの挙動からアイテムの位置を判定する。また、タグが正しいRF信号を送っているかどうかをチェックする。
X-ARの認識性能は、ARで表示した位置から約10cm以内の誤差で、ユーザーが意図するアイテムに誘導できていることを確認できた。また、アイテムの認識率は98.9%で、箱の中にある場合など、現実の利用シーンに近い電波条件でも91.9%の精度で特定できた。
X-ARの用途は、電子商取引(eコマース)事業者の倉庫での商品ピックアップの他、多数の商品を保管する場所から特定の1つを発見するシーンが想定される。製造現場で使用する場合、組み立て作業のなかで、技術者が正しい部品を捜し出すのに役立つ可能性がある。
研究チームはWi-Fi、ミリ波、テラヘルツ波など、さまざまなセンシング方式を使って、X-ARが持つ可視化能力、現実世界とのインタラクションの性能を高める方法を探る予定だ。