地熱や工場廃熱などの熱エネルギーで直接発電する「増感型熱利用発電」を開発――エネルギー問題の解決に向け一歩前進 東工大ら

東京工業大学と三櫻工業は2019年7月18日、熱源に置いておけば発電し、発電終了後もそのまま熱源に放置すれば発電能力が復活する、増感型熱利用電池の開発に成功したと発表した。

現在、安全かつ安心でクリーンな熱エネルギーの有効利用が強く望まれており、中でも日本の年間排出量76%を占める200℃以下の排熱の有効利用は急務となっている。熱を使った発電としては、地下水を水蒸気化しタービンを回す地熱発電や温度差を利用して発電するゼーベック型熱電などで発電していたが、その際のエネルギー変換効率向上が課題となっており、熱エネルギーで直接発電が可能となる技術開発が待たれていた。

同大学の松下祥子准教授は、色素内の光励起電荷により電解液のイオンを酸化/還元して発電する、薄くて軽いシート状の化学太陽電池「色素増感型太陽電池」に着目。光エネルギーを使って電子を励起する光励起を、熱エネルギーによる電子の熱励起に置き変えることで「増感型熱利用発電」を達成した。さらに、熱下でのイオンの移動を電解質内で制御することで、発電終了後にそのまま熱を与え続けるだけで発電能力を復活させることにも成功した。

今回作製した電池(約20×15×2mm、1.6g)を80℃に設定した恒温槽中に設置し100nAの連続放電テストを行ったところ、70時間以上の継続放電が確認できた。また放電終了後、そのまま80℃の恒温槽に10時間ほど放置しておくと発電性能が復活し、再び数時間程度発電した。この再放電時間は放置時間が長くなるほど伸び、このような放電終了/再放電サイクルを少なくとも25回以上安定して確認した。これは、今回開発した発電装置を熱源に埋めて回路のスイッチをオンオフするだけで、熱エネルギーによる直接発電が可能になったことを意味する。

さらに同研究グループは、半導体として狭いバンドギャップを持つゲルマニウム(トーニック製)を使用することで、発電温度を80℃以下にまで下げることに成功した。40~80℃と身近にあふれる温度で発電を確認しており、今後はIoTセンサー用電池からクリーンで安全な地熱利用発電所の構築、CO2排出量の削減、エネルギー問題の解決などに資するとしている。

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