磁力を使って5分で接着――磁性硬化型接着剤を開発

NTUsg/YouTube

シンガポールの南洋理工大学は、磁性を利用して硬化させる新しい接着剤を開発した。熱や光を使わずに、わずか5分で従来のエポキシ系接着剤と同等の強度に硬化する。フレキシブルデバイスや生分解性プラスチックなど熱に弱い素材にも利用でき、必要なエネルギーを従来法の120分の1に抑えられる。研究成果は、『Applied Materials Today』誌の2020年12月号で公開されている。

プラスチックやセラミック、木材などの接着に使用されるエポキシ系接着剤には、熱や紫外線、水分を利用して硬化させる一液性接着剤と、硬化剤とその都度混合することで硬化させる二液性接着剤がある。

今回開発した磁性硬化型の接着剤は、熱で硬化する市販のエポキシ樹脂に、酸化物ナノ粒子MnxZn1-xFe2O4を組み合わせて作製した。磁性を持つこのナノ粒子は、電磁エネルギーを通すと発熱し、エポキシ樹脂の硬化を活性化する。実験では、従来のエポキシ系接着剤と同等の7MPaの強度が示された。またナノ粒子の調整により、加熱温度や硬化速度も制御できる。

従来の加熱硬化型エポキシ系接着剤は外部からの熱を必要とするため、熱に敏感な材料の接着には使用できず、ゴムなど断熱に優れた素材の接着は非効率だった。例えば、スニーカーのゴム底部分と布地部分を接着させるには、熱が接着剤に届くまで長時間靴全体を加熱したり、接着後に冷やすための時間を取ったりしなければならなかった。

磁性を利用した接着剤の場合、接着剤の中で熱が生じるので、接着剤以外の製品の過熱や加熱ムラを避けられる。また、磁界を埋め込んだベルトコンベアシステムに、あらかじめすべての部品に接着剤を塗布した製品を流して一括で組み立てるなど、効率的な硬化プロセスを取ることも可能だ。

新開発の磁性硬化型接着剤は、市販の一液性エポキシ接着剤と混合するように作られているため、市場に出回っているエポキシ系接着剤の多くを磁性硬化型接着剤に変えられる。

研究グループは今後、接着剤メーカーと協力して実用化を進めるとしており、医療、自動車、スポーツ、航空宇宙などさまざまな分野での応用が期待されている。

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